【心臓リハビリ】介入前に確認したい「10の情報」心不全編

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ぴんころ
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こんにちは!心臓リハビリテーション指導士のぴんころです。

今回は、心不全患者さんにリハビリ介入する時に必要な、事前の情報収集についてお伝えします。

理学療法士
理学療法士

事前の情報収集って、そんなに大切なんですか?

ぴんころ
ぴんころ

患者さん個々の心不全の病態をしっかり把握してから介入することは非常に大切です!

リハビリ中のリスク管理にもつながりますよ。

この記事では、心不全患者さんを担当するにあたって、介入する前に把握しておくべき情報を「10個のポイント」に絞ってお伝えします。

まずは、その「10のポイント」を早速確認しましょう!

心臓リハビリ介入前の情報収集「10のポイント」
  1. 現病歴
  2. 既往歴および合併疾患
  3. 血液所見
  4. 画像所見(胸部X線など)
  5. 心電図所見
  6. 心エコー所見
  7. その他の検査所見
  8. 心不全の重症度、急性増悪因子の把握
  9. 生活歴
  10. 投薬状況(ここまでの治療経過)

これらは主にカルテから収集できる情報です。

ここから1つ1つ把握すべきポイントと、その解釈についてお伝えしますので、ぜひ最後まで読み進めてください!

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現病歴

現病歴は、どの疾患においても収集する情報ですが、心不全における現病歴で抑えるべきポイントがあります。

  • 入院時の症状:息切れ、胸痛、むくみ、食欲不振 など
  • 心不全での入院回数:初回入院 or 再入院
  • いつ頃から心不全症状が出ていたか?

入院時の症状の情報は、心不全重症度の推定や病態把握に役立ちます。例えば、眠れないほどの呼吸苦(起坐呼吸)の状態で入院したのか、息切れはあまりなく浮腫がひどくなって入院したのでは病状が全く異なります。

次に、これまでの心不全入院歴です。初回心不全入院の方は、心不全に至ったetiology(病因)を知る必要がありますし、再入院の方は以前との症状や検査所見との比較、なぜ再入院に至ったかを考える必要があります。

心不全症状が出始めた時期(いつ頃から)を知ることは、心不全症状が「急激に悪くなったのか」「段階的に悪くなったのか」を知ることができるため有用です。また、実際にリハビリ介入する際、入院に至るまでの症状経過をご本人と振り返ることが重要となります。それにより、特に初回心不全入院の方には、気付かないうちに症状が出ていて「今思えば…」などの言葉が聞かれ、実体験を通した心不全症状の確認ができ再入院予防にも役立ちます。

既往歴および合併疾患

既往歴は、担当患者さんがこれまでのどのような疾患にかかったを把握できるので、言うまでもなく大切な情報です。

特に、高齢の方が多くの疾患をお持ちの場合が多く、重複障害を引き起こしやすいためしっかりと情報収集します。整形疾患なども、転倒リスクの把握に役立つため、確認しておくといいと思います。

以前に心疾患の診断を受けておられる場合は、その病名や病態について確認が必要です。また、一般に心血管病の危険因子として次のようなものが挙げられますので、こちらの有無を確認することも大切です。

心血管病の危険因子:高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足、家族歴

合併疾患に関しては、心不全増悪とともに肺炎、腎機能悪化などその他の疾患を併発していないかを確認します。

血液検査所見

まず心不全で有名な血液所見といえば、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP、NT-pro BNP)です。心不全の病状推移の把握に有用な所見です。BNPについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください(参考:BNP、NT-proBNPについて

その他の確認ポイントは以下の項目です。

  • 腎機能:eGFR、BUN、Cr(クレアチニン)、BUN/Cr比
  • 血清Na(ナトリウム)、K(カリウム)値
  • 肝機能:GOT(AST)、GPT(ALT)、LDH、T-Bil、ALP、γGTP
  • 貧血:Hb(ヘモグロビン)値 など
  • 冠危険因子に関する項目:糖尿病、脂質異常症の検査値
  • 栄養状態:総蛋白、アルブミン など
  • 炎症反応:WBC(白血球)、CRP など

心不全治療に使用される利尿薬などの影響により、腎機能が悪化電解質異常を生じることがあります。

また、急性心原性肝障害や右心不全に伴う肝うっ血により肝機能障害をきたす可能性があります。

抗凝固剤や抗血小板薬を内服されている場合は、消化管出血などが原因で貧血が起こることもあります。

さらに、糖尿病や脂質異常症のコントロール状況を知ることで今後の心血管疾患をはじめとする疾患発症リスクを知ることができますし、栄養状態、炎症所見は運動負荷量を設定する上で重要な項目といえます。

画像所見:胸部X線など

画像所見についても介入前に確認します。最も一般的な検査は胸部X線で、心不全患者さんは以下のような特徴の所見が多くみられます。

胸部X線:心胸郭比 (CTR)の拡大、肺うっ血所見、胸水貯留

胸部X線所見により、心拡大の程度や、肺うっ血・胸水貯留の程度を確認することができます。

複数回撮影されている場合は、その経過や体重の推移との照らし合わせを行いながら現在の患者さんの病態を推定します。

その他CTMRIなどの検査を行っている場合は、その所見も確認します。

心電図所見

心電図所見では、既往の不整脈の有無や、今回入院時の新規不整脈がないかを確認します。

ペースメーカー等のデバイスが挿入されいる患者さんの場合は、適切にペーシングが行われているかを確認します。

また、高度な頻拍や徐脈により血行動態が保てない状態の場合は、リハビリが実施できない可能性があるため、直近の脈拍数を含めた心電図所見をみておく必要があります。

心エコー所見

心エコー所見は、循環器疾患に携わる方は絶対に知っておくべき内容といえます。

左室駆出率 (LVEF)、左室収縮拡張末期径 (LVDd/s)、左室壁運動、壁厚、弁膜症の有無、三尖弁逆流最高流速から求める肺動脈収縮期圧など、心エコーの結果から分かることは非常に多いです。(参考:LVEFによる心不全分類

心不全に至る経緯は様々あり、心筋の虚血、弁膜症、心筋症、不整脈、高血圧などが挙げられます。心エコーにより、これらの病態の多くを把握することが可能なため、心エコーの検査結果の解釈についてはぜひ理解することをお勧めします。

その他の検査所見

これまでの入院で、核医学検査(運動負荷あるいは薬剤負荷心筋シンチ)や心臓カテーテル検査を行っている方の場合は、それらの検査所見も確認します。心筋虚血がある方の場合は、治療歴や残存狭窄の有無について確認します。

また、過去にCPXなどを用いた運動負荷試験を実施されている場合は、過去の Peak VO2 や VE vs.VCO2 Slope 等、呼気ガス分析の結果を確認します。その他の身体機能評価(筋力、バランス、SPPB、TUGなど)も入院前の状況把握に有用といえます。

呼吸機能検査に関しては肺活量、1 秒率を確認し、呼吸器疾患の合併の有無についても把握します。

心不全の重症度、急性増悪因子の把握

ここまでの確認事項から、患者さんの心不全の病態を大まかに把握し、入院時の心不全の重症度(CS分類、NYHA分類、Nohria Stevenson分類)が推定できれば、介入前の状況としてはバッチリです!

ぴんころ
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担当する患者さんが、今回どのような経緯で心不全増悪に至ったのか、その背景にある疾患どのくらいの重症度で入院されたのかを知ることで、初回のリハビリ介入の仕方を事前に考えることが出来るのです!

生活歴

生活社会歴職業、家族構成、キーパーソン) および喫煙歴飲酒歴食習慣(外食の頻度等)、運動習慣についても、可能な範囲で事前に情報収集をします。リハビリ介入後に、ご本人から詳しく聴取していくことができる内容ですが、事前に大まかな内容を把握しておくと、不必要な質問を防ぐことができ、リハビリ中により多くの情報を収集することにつながります。

心不全患者さんにおいて、「生活歴」ということは非常に重要で、再入院を予防するためには「生活習慣の見直し」は不可欠です。心臓リハビリでは、1人の患者さんと長時間関わることの出来るという利点を生かして、患者さんの生活状況について詳しく聴取し、チームアプローチに必要な情報を収集することを意識しましょう。

投薬状況(ここまでの治療経過)

介入時の投薬状況について情報収集します。例えば、ハンプ・フロセミドなどの点滴加療が必要な状態なのか、経口の利尿薬追加のみの内服加療で病態が落ち着いたのかでは、重症度が異なります。

さらに重症になると、強心薬や複数の利尿薬を使用するなど、使用されている薬を通じて病態を推定することも可能です。

それぞれの薬の使用目的や効果を知ることで、「患者さんに対して、今どのような治療が行われているのか」ということが分かり、心臓リハビリ介入もしやすくなります。

心不全治療に頻用される薬:利尿薬、アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬、ARB、β遮断薬、強心薬、ARNI、SGLT2阻害薬、抗血小板薬、抗凝固薬

心臓リハビリ介入前の情報収集「10のポイント」のまとめ

  • 心不全患者さんのリハビリ介入にあたって、事前に確認しておきたい情報についてまとめました。
  • 冒頭でも説明しましたが、患者さんの病態把握は非常に大切なことです。
  • この記事が、心臓リハビリに関わる方に1つでも参考になれば幸いです。
  • 最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
1)日本心臓リハビリテーション学会 編:心不全の心臓リハビリテーション標準プログラム(2017年版)
2)上月 正博:心臓リハビリテーション 第2版.医歯薬出版株式会社.2019
3)山下 武志 監修、加藤 祐子 著:THE 心臓リハビリテーション 症例で紐解く超実践ガイド. 金芳堂. 2020

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