ペースメーカーとは?入院、手術、費用、生活の変化について解説

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ペースメーカーとは?

まず「ペースメーカー」とは何をするものなのか。

簡単にいうと、「心臓が上手く動かず、脈が極端に遅くなった方に対して、心臓の動きを助ける機械」です。

心臓が一定のリズムで動くように、動きを常に監視して必要な場合に補助をします。

ペースメーカーの適応について

刺激伝導系について

では、具体的にどのような方がペースメーカー植え込みの対象となるのでしょうか?

心臓には刺激伝導系(下図参照)というものが備わっていて、規則正しく電気信号が伝わることで、心臓が正常に収縮しています。

刺激伝導系

この道筋が何らかの影響で障害されると、電気信号がうまく伝わらず心臓が規則正しく動かなくなります(不整脈)。

不整脈にも様々な種類がありますが、ペースメーカーの適応となるのは、「徐脈」つまり心拍数が極端に遅くなる場合です。

徐脈とは?

一般に心拍数がおよそ50回/分を下回る状態「徐脈」と呼びます。徐脈になると、体への血液の運搬が上手くいかなくなり、様々な症状が起こります。

徐脈によって起こる症状
  • めまい
  • 疲れやすさ
  • 体のだるさ
  • 動いた時の息切れ
  • 失神

※トレーニングされたアスリートの方は元々心拍数が少ないことが多いですが、この場合は症状を伴わないためペースメーカー治療の対象とはなりません。

ペースメーカーの適応

徐脈の方すべてがペースメーカーの適応となるわけではありません。 

徐脈でも、「症状がない場合」や「直ちに命に関わる可能性が低い場合」は、経過観察となる場合が多いです。

「自覚症状があり日常生活に支障をきたす場合」「徐脈が原因で失神の症状がある場合」などがペースメーカーの適応となります。

実際は上記のような症状があり病院を受診して、心電図をはじめとした検査をした後、医師によりペースメーカーが必要な状態か判断されます。

また、心臓に植え込む機械(デバイス)には、ペースメーカー以外にも「ICD(植え込み式除細動器)」「CRT(心臓再同期療法)」があります。詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

ペースメーカー手術

手術時間と方法

ペースメーカー手術は比較的安全な手術で、手術時間は1~2時間程度です。レントゲンの透視下で、右または左の鎖骨のやや下を局所麻酔して手術が行われます。局所麻酔のため、手術中も患者様の意識はあり会話も可能です。

ペースメーカは鎖骨の下の皮下に留置した本体と心臓内に留置したリードからなり、本体で発生させた電気刺激をリードを通して心臓に伝えて心臓を動かす仕組みです(上図参照)。

ペースメーカーの種類

最も一般的なペースメーカーは上記でも示したリード線のあるタイプのペースメーカーです(下図の左側)。

最近では、「リードレスペースメーカー(下図中央)」というカプセル型で小型軽量化されたタイプもあります。

下図右側の「体外式ペースメーカー」は、急を要する場合や一時的にペースメーカーを入れて様子をみる場合に用いられます。

ペースメーカーの種類

ペースメーカーの合併症

ペースメーカー植え込み後の合併症としては、以下のようなものがあります。発生頻度は高くないですが、これらのリスクも十分に理解して手術に臨む必要があります。

  • 気胸
  • リードによる穿孔、心タンポナーデ
  • 感染・出血
  • 縫合不全
  • リード移動
  • 造影剤の使用による合併症

入院期間はどのくらい?

ペースメーカー植え込み目的で入院された場合の入院期間は、1週間から10日程度となる場合が多いです。

手術前に心不全症状がある場合や、手術後の合併症などが生じた場合は、それらの治療のため入院期間が長くなることがあります。

術後の経過に問題がなければ、手術翌日から食事やトイレ移動などは可能です。

ペースメーカー植え込みの費用

ペースメーカーの植込み手術を受ける際の医療費に対しては、高額療養制度が利用できます。

また、ペースメーカーを植え込んだ患者さんは申請を行うことで、身体障害者の認定を受けることができます。身体障害者の認定を受けることで、医療費の一部還付または全額免除を受けることができます。

※ペースメーカー植え込みをされた方は平成26年3月までは、一律に身体障害者手帳1級が交付されていましたが、平成26年4月からは、ペースメーカー等への依存度や日常生活活動の制限の程度により、1、3、4等級のいずれかが交付されています。

ペースメーカー植え込み後の生活

術後早期

手術翌日からは、感染症創部の出血皮下の血腫、またはリードの移動などがないかを観察します。

植えこんだリードが確実に安定するまでには1~2ヶ月かかるといわれているため、退院後もリードの位置が安定するまでの期間は、ペースメーカーを植え込んだ側の上腕を激しく動かしたり、重い物を持つといった動作は控える必要があります。

術後2~3カ月以降

術後2~3カ月が経過し、体調に問題がない場合は通常と同様の生活が可能です。ウォーキングや軽い運動など、日常的な運動も特に制限はありません。ただし、ペースメーカー本体を圧迫したり、リードが入った部分に強い力が入る運動は控える必要があります(例:鉄棒、腕立て伏せなど)。

運動の強度や方法に不安がある方は、医師や医療従事者に確認してみましょう。

定期検査

ペースメーカー植え込み後は、3ヶ月~半年に1度程度「定期検査」を受けます。

ここでは、健康状態やペースメーカーの作動状況、電池の残量、リード(導線)の異常の有無などを確認します。

ペースメーカーの遠隔診断機能

ペースメーカーには遠隔診断機能が備わっているものがあります。遠隔診断機能では、患者さんの心臓の状態とペースメーカーの状態を定期的に暗号化されたデータとして自動的に送信しています。これにより、定期検査以外のときも担当医師は受診した情報をもとに患者さんの心臓の状態を定期的に確認することができます。

遠隔診断機能は、ペースメーカーの設定が最適な状態になっているのか、設定を調整する必要があるのかなどを判断するための補助的な役割を果たしています。

ペースメーカーの電池交換

ペースメーカは電池で作動している為、電池が少なくなると本体を交換する必要があります。

電池寿命は電池の消耗までは通常で約5~7年の方が多く、中には10年以上持つ方もおられます。

通常、交換手術はペースメーカ本体のみを交換するため比較的短時間ですみます。また、術後はすぐに歩行可能となり、日常生活は手術前と変化はありません。

生活で気を付けること

自己検脈を行う

ペースメーカーが正常に作動しているかを自分で確かめる方法が、自分で脈を調べる「自己検脈」です。

図のように、脈が触れる部分に3本の指を当て、1分間測ります。このとき、「脈拍数がペースメーカーの設定回数を下回っていないか」ということや、「脈のリズムが乱れていないか」を確認しましょう。

ペースメーカー手帳を携帯する

ペースメーカー手帳には、植え込まれたペースメーカーの種類や設定、治療経過など、重要な情報が多く記載されています。

ペースメーカーの種類によっては、受けられない検査(MRIなど)があったり、注意を要する治療があるため、手帳などを通してペースメーカーが入っていることを事前に伝えておくことが重要です。

また、外出や旅行の際にも常時携帯し、いつでも提示できるようにしておくことで、緊急時にも適切な対応が可能となります。心臓ペースメーカー手帳は数か国語で記載されているため、海外の空港での提示も有効です。

ペースメーカーに影響がある機器について

使用してはいけないもの(影響を受けるもの)

強い電磁波を発生する機器や場所は、ペースメーカーに影響を与えるため避ける必要があります。

  • マッサージチェア
  • 体脂肪計
  • 電気自動車の急速充電器
  • 高周波治療器
  • 低周波治療器
  • 全自動麻雀卓
  • 電気風呂(低周波電流が流れている風呂)

影響を受ける可能性があるもの

以下のものはペースメーカーに影響を与える可能性があるため、注意して使用することが必要です。

  • 携帯電話、スマートフォン:ペースメーカの植込み部位から15cm以上離して使用する
  • 電磁調理器:使用中は植え込み部が近づかないようにする
  • IH炊飯器:使用中は植え込み部が近づかないようにする
  • 車のスマートキーシステム:アンテナ部から植込み部位を22cm以上離して使用する
  • ICカード:ICカード読み取り機から12cm以上離して使用する
  • 盗難防止装置(EAS:電子商品監視機器):立ち止まらずに通り過ぎる
  • 空港の金属探知機:ペースメーカー治療を受けていることを説明して、他の検査方法にしてもらう

※これらの使用が原因で身体に異常(めまい、ふらつき、動悸等)を感じた場合、直ちに使用をやめ、植込み部位から遠ざけるようにします。もし、身体の異常が回復しなければ、直ちに専門医の診察を受けて下さい。

使用しても問題がないもの

以下のものは、基本的にペースメーカーへの影響は少ないとされています。ただし、頻繁に電源スイッチを入れたり切ったりすることは、電磁波が発生するため控えてください。

  • 電気カーペット、電気敷布、電気毛布、電気コタツ
  • 電子レンジ、トースター、ホットプレート、ミキサー
  • テレビ、ラジオ、ステレオ
  • 補聴器
  • コンピュータ、無線LAN、コピー機、ファックス
  • 洗濯機、掃除機、 エアコン、空気清浄機、加湿器
  • 電車など公共の交通機関

ペースメーカーについてのまとめ

  • ペースメーカー治療の適応や費用、生活上の注意点についてまとめました。
  • ペースメーカー植え込み後の生活は、それほど多くの制限を受けるわけではありませんが、使用を避ける機器などの知識を持っておくことは重要です。
  • ペースメーカーと上手く付き合って生活していくために、この記事が参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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