ヒートショックとは
「ヒートショック」とは、急激な温度差により血圧が大きく変動することで失神や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、身体へ悪影響を及ぼすことです。人間の生理的な反応として、寒い場所では血管が収縮するため血圧が上がり、逆に暑い場所では血管が拡張し血圧は下がります。
これらの血圧変化が短時間で急激に起こることでヒートショックを生じます。
ヒートショックの原因
ヒートショックの原因には、温度差が起こりやすい環境が影響しています。
冬季の温度差
ヒートショックが一番起こりやすいのは冬季です。
暖かい場所から冬場の冷え込んだトイレ・洗面室・浴室など、極端な温度差がある場所へ移動することでヒートショックを生じやすくなります。
実際、消費者庁の調査では、1月をピークに11月~4月までの時期が高齢者の入浴中の事故の好発時期とされています。
サウナ
ヒートショックに気を付ける必要があるのは、高齢者ばかりではありません。
近年人気が高まっているサウナも、ヒートショックの原因になることがあります。
サウナから水風呂に入るとき、水風呂の強烈な寒冷刺激によって血圧は急上昇し、脳卒中や心筋梗塞だけでなく、極端に脈が遅くなる「徐脈」や、「致命的な不整脈」が発生することがあります。
不整脈は体力に自信のある若い方でも、十分に起こりうる症状です。
ヒートショックに注意すべき特徴
注意すべき人
ヒートショックを引き起こすリスクが高い方の特徴を以下の挙げます。
- 65歳以上の高齢者
- 狭心症や心筋梗塞、脳卒中の既往がある方
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 不整脈
- 睡眠時無呼吸症候群
高齢者は若年者と比較して、暑さや寒さに対する感覚が鈍くなっているため、体の危険信号に気づきにくく、気付いたときには重篤な症状になっていることがあるため注意が必要です。
また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの基礎疾患があると、動脈硬化による血管の機能低下と余分なコレステロールなどが血管壁にたまっているため、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を起こす危険性が高まります。糖尿病による自律神経障害により血圧が不安定になることも、ヒートショックの一因となります。
注意すべき習慣や住宅環境
- 熱いお風呂に入るのが好きな方
- 長風呂が好きな方
- 浴室(脱衣所)や洗面、トイレに暖房設備がない方
- 食直後や飲酒後に入浴する習慣がある方
- 排便時に長い時間いきむことが多い方
お風呂の温度が熱すぎると、体の温度変化が大きくなるため血圧変動も大きくなります。
屋内においても、浴室やトイレでの温度変化が大きくなることもヒートショックの原因となるため、注意が必要です。
また、食後は消化のために胃や腸に血流が集まるため、血圧が下がりやすくなります。その状態で入浴して、さらに血圧が下がると、めまいや失神を引き起こすことがあります。
排便時の注意点としては、いきむと血圧が上がり、排便後急激に血圧が低下するため、ヒートショックが起こりやすくなります。
ヒートショックの症状
ヒートショックの症状は、軽症の場合は「めまい」「立ちくらみ」「頭痛」などが多いです。
以下の症状がある場合は注意が必要です。
- 意識の喪失(失神)
- 嘔吐
- 胸の痛み
- 脱力、しびれ
- ろれつが回らない
これらの症状が持続し、脳梗塞や心筋梗塞の発症が考えられる場合は、早急に病院を受診する必要があります。
意識を失い、浴槽の中でそのまま溺死するケースもあるため、十分な注意が必要です。
ヒートショックの死亡数
厚生労働省の「人口動態調査」によると、「高齢者の不慮の溺死及び溺水」による死亡者数は高い水準で推移しており、平成23年以降、「交通事故」による死亡者数より多くなっています。
その中でも、令和元年の家や居住施設の浴槽における死亡者数は4,900人にものぼり、不慮の溺死事故の7割以上を占めています。この多くはヒートショックが関係していると考えられ、身近に起こりうる事故であることがお分かりいただけると思います。
ヒートショックになった時の対処法
では、実際にヒートショックの状態になった人がいた場合どうしたらよいのでしょうか?
- 呼びかけて意識がない場合や、明らかに様子が様子がおかしい時は救急車を呼びましょう
- 脈拍や呼吸が確認できない場合は、速やかに心肺蘇生などの応急処置を行いましょう
- 浴槽で溺れていた場合は浴槽から引き上げるか、お湯を抜きましょう
- 胸の痛みや手足のしびれ、呂律が回らないなどの症状があった場合も救急車を呼びましょう(心筋梗塞や脳卒中の可能性があるため)
- 吐き気がある場合は、横向きに寝かせて嘔吐物がのどに詰まらないようにしましょう
ヒートショックの予防と対策
自宅で出来る予防と対策
- 脱衣所と浴室を暖めて、温度差を少なくする
- お風呂の温度は低めに設定する(41度以下が目安)
- ゆっくりとお風呂から出る(急に立ち上がらない)
- 入浴前と入浴後に水分を補給する
- 食後1時間以上空けてから入浴する
- お酒を飲む場合は入浴後にする
- 人がいるときに風呂に入る(家族が声かけする)
サウナでの注意点
サウナから出て水風呂に入る場合は、急に入るのではなく体に水をかけて慣らしてから入ることで、急激な血圧の変動を抑えられます。
また、過度に冷たい水風呂は避けることも有効だと思います。
サウナに入る際は水分補給はこまめに行い、持病がある人は入らない(医師に相談する)方が良いでしょう。
サウナの適正使用はサウナ5分、水風呂1分のセットを3クール以内と言われており、体調にあわせた時間調整をすることも大切です。
ヒートショック予報
東京ガス株式会社および一般財団法人日本気象協会によって毎日更新されている「ヒートショック予報」というものがあります。
ヒートショック予報は、気象予測情報にもとづく家の中でのヒートショックのリスクの目安で、日々の注意度が下記の5段階で示されています。
急な冷え込みや気温の変化に気づくことが出来ると同時に注意喚起になるため、天気予報と一緒にチェックしてみるのもいいかもしれません。
ヒートショックについてのまとめ
- ヒートショックについて、原因や対応、対策についてまとめました。
- 身近でも十分に起こりうるヒートショックは、日頃からのちょっとした工夫で予防することが可能です。
- 持病がある人や高齢の方は特に注意していただき、不慮の事故が一件でも減ることを願います。
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
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