こんにちは、理学療法士のぴんころです。
私は日ごろ患者さんのリハビリをする中で、運動も大切だけど食生活もすごく大切だなぁと感じます。
高血圧の方に減塩指導が行われますが、そもそもなぜ必要なのでしょうか?
最近では食生活への意識が高くなり、「減塩は大切」「日本人は塩分を摂りすぎだから減塩しましょう」と一般的に言われるようになりました。ただ、「なぜ減塩しなければならないのか?」これを正確に答えらえる方は意外と少ないと思います。
塩分を摂りすぎるとどうなるの?
塩分の摂りすぎは、多くの病気の原因となることがこれまでの多くの研究から分かっています。
①高血圧
塩分と聞いてまず頭に浮かぶのは高血圧ではないでしょうか?人の体には、体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあります。塩分が体内にたくさん取り込まれたとすると、それを薄めようとして水分も多く溜め込まれます。
体内の水分が増えれば血液の量も増えるため、血管がパンパンになり流れるときの圧も高くなります。水道の蛇口を思い切りひねって、ホースから水が勢いよく流れてくるイメージです。このような機序で高血圧となります。
②循環器病
高血圧の状態が続くことは、血管にとって良くないことです。24時間休まず体に血液を供給している血管に、負担がかかり続けることで血管の内側がもろくなったり、血管自体が固くなったりします(動脈硬化)。これにより、“血管がつまる”、”血管が破れる”ということが起こりやすい状態となるため、脳卒中や心筋梗塞などの循環器病のリスクが高くなります。血管は全身にあるため、傷んでしまうと他にも様々な病気をもたらす可能性があります。
③腎臓病
塩分を摂りすぎると、腎臓にも悪影響があります。腎臓は血液の老廃物をろ過して、尿として排泄する役割があります。余分な塩分を体外へ排泄しようとする働きもあります。塩分も水分も体内に多くある状態が続くと腎臓へ過度な負担がかかり、いずれは機能が低下してしまいます(慢性腎不全)。フル稼働が続くことで疲れきってしまうのです。
④骨粗しょう症
上記にもある通り、塩分を摂りすぎると余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出しますが、この時体内のカルシウムも一緒に排出してしまいます。骨を強くしようとしてカルシウムを積極的にとっていたとしても、塩分と一緒に排出されている可能性があります。
カルシウムはご存じの通り、骨を作るのに必要です。体の中では常に古い骨は破壊され新しい骨が作られています(骨代謝)。カルシウムの不足状態が続くと、この骨代謝が上手くいかなくなり骨がスカスカ、いわゆる骨粗しょう症になってしまいます。
⑤胃がん
海外や日本の研究において、食塩を多くとることで胃がんのリスクが高まることが明らかになっています。胃の中で食塩の濃度が高くなると、胃の粘膜がダメージを受け、慢性的な炎症を引き起こすと考えられています。そのような環境下ではヘリコバクター・ピロリ菌への感染が起こりやすくなり、これが胃がんリスクを高める原因になるといわれています。
このように、塩分の摂りすぎによる影響は全身に及びます。直接は関係なさそうな病気をももたらす可能性があり、正しい知識を持っておくことは重要だと思います。
減塩をするメリット
減塩をして得られる効果としてまず挙げれるのは、降圧効果です。減塩による降圧効果には個人差があるものの、降圧効果があること自体はすでに多くの研究で証明されています。6g/日未満を目標とした減塩により、より有効な降圧が得られ、心血管病イベントを抑制できると期待されています。
また、塩分を摂りすぎることによる弊害は上記に示した通りで、適正な塩分摂取量を保つということは健康寿命を延ばすという点でとても有効なことだと考えられます。
具体的な減塩方法について
- 厚生労働省が目標とする塩分摂取量の値は男性7.5g/日、女性6.5g/日未満です。
- 世界的に見れば、WHOの目標値は5.0g/日未満でさらに低値です。
- 実際の日本人の平均塩分摂取量は、令和元年の調査で男性10.9g/日、女性9.3g/日です。
減塩の必要性が少しずつ浸透してきた昨今ですが、目標とする値にはまだまだ到達していないのが現状です。これまで全く減塩を意識されていなかった方は、少し意識するだけで1-2g/日は簡単に減らせると思います。まずは“簡単で出来そうなことから始める”ということが大切です。減塩のコツをいくつか紹介しますので、ご参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 香辛料や香味野菜を利用する
- ”だしのうま味”を利用する
- 麺類の汁は残す
- みそ汁は具沢山にする
- 減塩の商品を利用する
- 調味料は“かける”から“つける”に変更する
- 腹八分目にする
- 商品を買うときに「塩分相当量」の記載をチェックするように心がける
- ナトリウム排出を促すカリウムを摂取する
まとめ
- 減塩する理由とメリットについてまとめました。
- 塩分摂取量の現状と、減塩方法のコツを簡単にまとめました。
- 減塩を行う理由をきちんと理解した上で、積極的な健康管理に役立てていただければ幸いです。
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献) 1.Strazzullo P, D'Elia L, Kandala NB, et al. Salt intake, stroke, and cardiovascular disease: meta-analysis of prospective studies. BMJ 2009; 339: b4567. 2.日本腎臓病学会編.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018.東京医学社.2018 3.Ge S, Feng X, Shen L, et al. Association between Habitual Dietary Salt Intake and Risk of Gastric Cancer: A Systematic Review of Observational Studies. Gastroenterol Res Pract 2012;2012 4.日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編:高血圧治療ガイドライン2019. 5.厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査報告
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