この記事では入院機能障害について以下のことが分かります。
治療後スムーズに入院前の生活に戻れるように、「入院中の方」や「これから入院を控えている方」はぜひ参考にしてみてください!
入院関連機能障害(HAD)とは
病気やケガで入院をして、治療は順調に終わったけど、入院前より「体が動かしにくくなった」「足腰が弱って歩けなくなった」「体力がなくなった」ということは、非常によくあることです。
このような入院による体の機能低下を「入院関連機能障害(Hospitalization-Associated Disability:HAD)」といいます。
足の骨折や脳卒中による体のマヒなど、ケガや病気の症状そのもので歩行が困難になることはもちろんありますが、HADはこれとは異なります。
通常は足腰には影響のない疾患で入院したはずが、「入院したことが原因で弱ってしまった」という点がポイントです。
これらは全入院患者の30-40%に発生すると報告されています。非常に多い割合ですね!
では、なぜHADが起こってしまうんでしょうか。
HADがなぜ起こるのかを確認していきましょう!
HADはなぜ起こるのか
入院中に体の機能が落ちてしまう一番の原因は「ベッドの上で安静にしている時間が長いこと」です。
治療をしているのだから当然のことかもしれませんが、問題はこれが「長すぎる」ことです。
安静にし続けることで起こる弊害は全身に及びます。足腰が弱ることは言うまでもありませんが、呼吸器系や循環器系、消化器系までその影響はさまざまです。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
つまり、入院中とは言っても「安静にしすぎることは良くない」ということですね!
HADを引き起こしやすい人の特徴
つぎに、入院関連機能障害に注意すべき人はどんな方かについて説明します。
入院関連機能障害のリスク因子として、厚生労働省の資料では以下のものが挙げられています。
- 高齢であること(特に85歳以上)
- 入院前のADL低下
- 認知機能低下
- 歩行機能障害
- 栄養状態不良(低アルブミン血症)
- 悪性腫瘍の既往
- 脳卒中の既往 等
高齢になるほど、入院前から足腰が弱っている方の割合が多く、入院によってさらにADL(日常生活動作)が低下してしまう場合があります。
さらに、高齢者は1つの病気だけでなく、病気を併存していることが多く治療が長期化しやすいこともHADを引き起こす要因と考えられます。
認知機能の低下に関しては、認知症の方は自発的に動くことが減ってしまうケースが多いため、入院中横になっている時間が長くなりやすく、入院によって認知機能の低下が進行し悪循環を招いてしまうことがしばしばです。
また、栄養状態が悪化すると筋力低下を招きやすくなりますので日頃からの栄養管理はとても重要です。
がんや脳卒中の既往がある方も、入院中の体の機能低下には注意が必要となります。
入院前の様子や、今の体の状態をみて、HADになりやすいかを予測できるんですね。
当てはまる方は十分に注意しましょう!
HADを予防するには
HADに注意すべき方は分かりましたが、では予防するにはどうしたらいいのでしょうか。
ここからは入院前と入院中に分けて、「HADの予防のために気をつけたいこと」をお伝えします。
入院中に心がけたいこと
入院中に気をつけたいことは、まず「安静にしすぎない」ことです。
現在は治療が順調に進めば、入院早期からリハビリテーションを開始して、機能低下を最小限にしようという取り組みが進んでいます。
リハビリが開始となった場合は、ぜひ積極的に参加しましょう!
また、リハビリの時間以外でも自分で動くようにすることは重要です。医師や看護師、リハビリ職種の担当者に「今の状態なら、どのくらいまで動いてもいいのか」ということを確認していただき、なるべく入院の早い段階から入院前の活動量に近づける努力をしましょう。
そうすることで、退院後の生活にスムーズに順応することができると思います。
普段の生活から心がけたいこと
入院してから、体調に合わせてできるだけ動くようにすることは前述したようにすごく大切ですが、入院する以前の「日頃の生活」の段階から気をつけておきたいことがあります。
まずは「足腰を強く保つこと」、次に「栄養バランスを考えた食事を摂ること」です。適度な運動とバランスの良い食事は、やはり健康の基本です。
さらには、「精神状態を健康に保つこと」も重要です。病気が発覚し入院することになると、どうしても気分が落ち込みやすくなります。周囲に悩みを相談できる人をもつことや、自分なりのストレス発散方法を持っておくことは心の健康のために大切だと思います。
今挙げた3つのことは、「フレイルの予防」にも共通しています。「フレイル」とは、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指します。フレイル予防の3つの柱として、以下のものが挙げられます。
日頃からフレイル予防を意識した生活を心がけることで、万が一入院が必要になった時も、体が弱るリスクを減らすことが出来るのです!
しっかり食べて、体を動かして、外に出かける機会を多く作ることが大切です!
いざというときのために、元気な時から「筋力と体力の貯金」をつくり「心の健康」も守っていきましょう!
入院関連機能障害(HAD)についてのまとめ
- 入院関連機能障害(HAD)の特徴や予防方法についてお伝えしました。
- HADの多くは、入院早期から体を動かすことや、入院前からの生活の意識づけにより予防することができると考えられます。
- 病気がケガで入院された方が、退院後も自らの望む生活が送れるように、HADへの理解が広がり予防への意識が高まればいいなと思っています。
- この記事の内容が1つでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
参考 厚生労働省:要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療 参考資料(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001079168.pdf)
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