こんにちは、ぴんころです。
2018年3月に公表された「急性・慢性心不全診療ガイドライン」のフォーカスアップデート版が2021年3月に発表されました。
このアップデート版では、2018年以降に心不全に対する薬物・非薬物療法の臨床試験の結果が国内外で相次いで公表されたことをふまえ、これらのあらたなエビデンスの蓄積に基づいて改訂されました。
この記事では、ガイドラインの中の『LVEFによるるあらたな分類の提唱』について詳しくお伝えします。
「HFrEF(ヘフレフ)」、「HFpEF(ヘフペフ)」っていうのは聞いたことあるけど、他にもあるんですか?
はい。他に「HFmrEF」、「HFrecEF」、「HFworEF」、「HFuncEF」の4つの分類があります。
何だか難しそうですよね。でも大丈夫!
これから詳しく説明しますので、ぜひこの機会に一緒に理解しましょう!
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LVEFとは?
そもそもLVEFとは、左室駆出率(left ventricular ejection fraction)を意味していて、心エコー検査などで測定します。
心臓から全身に血液を送り出すのに重要な左心室の収縮機能の指標になります。
このLVEFの違いによって分類があり、これまでは「検査施行時のLVEFの違いによる分類」が一般的でしたが、フォーカスアップデートでは「LVEFの経時的変化による分類」が加わりました。
検査時点の状況、いわゆる「点」で捉えていたLVEFという指標を、経時的な視点、いわゆる「線」でも見ていこうという考え方です。
検査施行時のLVEFによる心不全の分類
まずは、これまでも馴染みのある「HFrEF」「HFpEF」、そして「HFmrEF」についてです。
簡単に言うと、左室駆出率が「低下している」「保持されている」「軽度低下している」の3つに分類されています。
検査施行時にLVEF40%未満を「HFrEF」、50%以上を 「HFpEF」 、その間の40%以上50%未満を 「HFmrEF」 といいます。
「HFrEF」 のrは「reduced」の略で「減少した、減弱した」などの意味です。つまり左心室の収縮機能が弱っているということです。
「HFpEF」のpは、「preserved」で「保存する、維持する」などの意味です。つまり収縮機能は維持されているということです。
「HFmrEF」の mrは「mid-range」なので「中間」、その通りの意味でHFrEFとHFpEFの間ということです。
【40】【50】というキーになる数字と、「ヘフレフ」「ヘフペフ」という言葉を覚えてしまえば、楽に記憶出来ます!
ガイドライン上では以下のように説明されています。
LVEFの経時的変化による心不全の分類
つぎに、新しく追加された経時的変化による分類です。
「HFrecEF」 「HFworEF」 「HFuncEF」の3種類があり、時間経過とともにEFがどのように変化したのかで分類されています。
「HFrecEF」のrecは、「recover」で「回復する」という意味です。
「HFworEF」のworは、「worsened」で「悪化する」という意味です。
「HFuncEF」のuncは、「unchanged」で「変わらない」という意味です。イメージを表すと下図のような感じです。
「recover」「worsened」「unchanged」の単語と意味を覚えておけば 、迷うことがなくなると思います!
ガイドライン上では以下のように説明されています。
なぜこのように分類するのか?
では、次はこのようにたくさんの分類が出来た背景について見ていきます。
EFの低下したHFrEFと保持されているHFpEFでは、心不全に至る背景に違いがあります。HFrEFでは虚血性心疾患や拡張型心筋症などの心筋疾患が多く、HFpEFの原因としては高齢、高血圧、心房細動などが挙げられます。HFmrEFについては、その特徴が現在研究されている段階です。
そのため、HFrEFとHFpEFでは検査方法や治療方法にも違いが出てきます。
検査施行時のLVEFによる分類は、入院初期の段階で病態を把握して、早期に適切な治療を開始するために分類されています。
一方、経時的変化による分類は、心不全患者さんの予後を予測するために必要な分類です。
病気との付き合いが長くなることが多い心不全では、患者さんが今後どのような経過をたどるのかを予測できることは重要です。患者さんの病気のステージに合わせて各職種が対応できるという点で、この分類はすごく有用だと思います。
まとめ
- LVEFによるあらたな心不全の分類について解説しました。
- 一見複雑そうですが、意味を理解すれば比較的簡単に覚えられます。
- 心不全患者さんと関わる上で一般的に使用される用語なので、ぜひ一緒に理解しましょう。
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
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