あなたは転倒リスクを予測するバランス機能評価というと、何を思い浮かべますか?
一般的なのは以下のような評価方法ではないでしょうか?
- Timed Up and Go test(TUG)
- Fanctional Reach Test(FRT)
- Berg Balance Scale(BBS) など
これらは臨床でよく使用される評価で、動的なバランス機能を評価しています。
今回紹介するのは、静的立位バランス評価の【SIDE】です。
聞きなれない評価かもしれませんが、簡便で有用な評価方法ですので、ぜひ参考にしてみてください!
SIDEとは
「SIDE」の正式名称はStanding test for Imbalance and Disequilibiriumといい、日本で開発された判別的なスクリーニングツールです。
SIDEの特徴は下記の通りです。
- 目的:静的立位バランス能力を段階づけすることで転倒予防に役立てること
- レベル:Level 0,1,2a,2b,3,4の6段階で判別
- 所要時間:短時間(5分以内)でできる簡易的な評価
SIDEは、Berg Balance Scale scoreと強い性の相関があり、バランス尺度としての信頼性と妥当性が認められた評価方法です。
それでは、実際の評価方法を確認していきましょう。
SIDEの評価とレベル判定方法
評価方法
準備するものはストップウォッチのみです。
以下の図に示すように「①開脚立位→②閉脚立位→③つぎ足立位→④片脚立位」の順に評価をすすめます。
評価が進むほど、姿勢保持の難易度は高いです。
各姿勢が規定時間保持できなかった時点で評価終了となり、レベルが決定します。
レベル0は自力での立位保持が困難な状態、レベル4は片脚立位が30秒以上保持できる状態なので、レベル4に近づくごとに立位バランスは良好ということを示しています。
1つ目は「開脚立位」で、足を肩幅くらいに広げた状態で、自力で立位保持ができるかを評価します。
立ち上がるときに介助するのはかまいません。
立位でバランスが崩れてしまったり、常に介助が必要な場合は「レベル0」の判定です。
両手を離して自分でしっかりと立つことが出来れば、次のテストへ進みます。
2つ目は「閉脚立位」の姿勢です。図のように両足の内側をピッタリとつけた状態で立位保持します。
支持基底面が狭くなるため、姿勢保持の難易度は上がります。
この姿勢を5秒間キープ出来なければ「レベル1」の判定です。
5秒間キープ出来ればレベル2以上となり、次のテストへ進みます。
3つ目は「つぎ足立位」です。タンデム立位ともいわれる姿勢です。
図のように足を前後一直線になるように姿勢をとり、5秒間保持できるかを評価します。
左右の前後を入れ替えて、両方の足で評価を行います。
両足ともに保持できなければ「レベル2a」、片足だけ保持できた場合は「レベル2b」の判定です。
両足ともに保持できた場合はレベル3以上となり、最後のテストへ進みます。
最後の4つ目は「片脚立位」です。
図のように、支持物がない状態で30秒片脚立位が保持できるかを評価します。
左右どちらの足でも、30秒保持できなかった場合は「レベル3」、どちらの足でも30秒保持できた時点で「レベル4」となります。
SIDEのレベル判定(まとめ)
レベル判定をまとめると、以下のようになります。
レベル判定 | |
レベル0 | 開脚立位保持困難 |
レベル1 | 開脚立位は一人で保持できるが、閉脚立位は5秒以上保持困難 |
レベル2a | 閉脚立位は5秒以上可能だが、つぎ足立位は、両側とも5秒以上保持困難 |
レベル2b | つぎ足位は片側だけ5秒以上保持可能だが,もう一方は5秒以内 |
レベル3 | つぎ足は両側とも5秒以上可能だが、片脚立位は30秒以上できない |
レベル4 | どちらか一方で片脚立位が 30 秒以上可能 |
SIDE評価中の注意点
SIDEの評価を行うときは以下の点に注意して、検査を受ける方の安全に配慮して行いましょう!
- テスト中の姿勢でバランスを崩して介助を受けた場合は、それ以上のレベルは試みない(転倒予防のため)
- テストを通じて、対象者が転倒しないように十分な注意を払う
- テストの姿勢になるまでの動作中は、介助を行っても良い(判定には影響しない)
- テスト中には、日常使用している装具の使用は認めるが、歩行補助具の使用は認めてられていない
SIDEの結果を臨床に活かすには
SIDEの検査を行い、実際の転倒予防につなげていくには、レベル判定を解釈していくことが必要です。
回復期リハビリテーション病棟入院患者 556 名を対象にした「SIDEのレベルと転倒発生の関係」を調査した研究では、入院14日以内に転倒した36件の入院時のSIDEレベルは、非転倒群と比較して有意に低いことが分かっています。
また、同研究では「SIDEレベル2b以上」では転倒の発生はなかったとされています。
【結果から考えられること】
- 入院時のスクリーニングでSIDEレベルが低い方は、転倒に対するリスク管理をしっかりと行う。
- 具体的には「SIDEレベル2a以下」の方は転倒する可能性が高いものと考え、対応する必要がある。
検査した結果を実際の転倒予防に活かしていきましょう!
また、「SIDEレベルと日常生活の活動目安」に関しては、以下のように考えられています。
SIDEの結果だけでADLの介助量が決まるわけではありませんが、ひとつの参考にしてみて下さい。
対象者のADL(目安) | |
レベル0 | 移動には車いすを使用。ベッド・車いす間の移乗は介助で行う。 |
レベル1 | ベッドサイドでの立位移動のときには、必ず見守りまたは介助を行う。 |
レベル2a | 危険肢位・動作を取らないように自分で注意できる能力があれば、手すりあるいは歩行器歩行が可能。 |
レベル2b | 危険肢位・動作を取らないように自分で注意できる能力があれば独歩可能。 できない場合は周囲が厳重に注意する必要がある。 |
レベル3 | 屋内の独歩は可能、屋外は注意が必要。 |
レベル4 | 屋内外とも転倒の危険性はほとんどない。 |
転倒リスク評価のひとつ「SIDE」についてのまとめ
今回は静的立位バランス評価「SIDE」についてお伝えしました。
スクリーニング評価として簡便で有用な検査「SIDE」ですが、そのほかの転倒リスク評価と合わせて行うと、さらに正確に判断できます。
そのため、最後にその他の転倒リスク評価に関してお伝えして記事を終わります。
動的バランスの評価
- Timed Up and Go test(TUG):椅子から立ち上がり3mを快適な速度で歩行し、折り返して座るまでの時間を計測する評価。転倒リスクとしては13.5秒、介護予防の観点からは11秒がカットオフとして報告されています。
- Fanctional Reach Test(FRT):足を肩幅に開き、一側上肢の肩を90°屈曲した状態で、踵が浮かないところまで上肢を前方にリーチする評価。虚弱高齢者の場合は18.5cm未満、脳卒中患者では15.0cm未満で転倒リスクが高いといわれています。
- Berg Balance Scale(BBS):全14項目の動作を行い、各項目0〜4点(合計56点)で評価。歩行自立度の判定基準として45点以上がカットオフ値として用いられています。
転倒評価指標
- STRATIFY:5つの質問項目で、「はい=1」「いいえ=0」の2段階で採点を行う簡易的な評価方法。転倒ハイリスク者のカットオフ値は2点とされています。
- Morse Fall Scale(MFS):6項目(転倒歴の有無、合併症の有無、歩行補助具の使用状況、静脈注入療法の有無、歩行障害の程度、精神状態)から構成されており、各0~30点の重みづけがされています。135点満点で、転倒ハイリスク者のカットオフ値は45点とされています。
たくさんの評価指標がありますが、最終目的は「患者さんを転倒させないこと」です!
リスクを適切に判断し、転倒予防に努めていきたいですね。目指せ「転倒ゼロ」!
この記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
参考 ・寺西利生:病棟における転倒予防:バランス評価尺度 Standing test for Imbalance and Disequilibirium(SIDE)とその運用.日本転倒予防学会誌 Vol.4 No.1:5-10.2017 ・Teranishi T, et al: Jpn J Compr Rehabil Sci. 1:11-16, 2010. ・高取克彦 et al:日本語版 STRATIFY および Morse FallScaleの作成と有用性.理学療法学 vol.38 No.5:382一389.2011
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