それでは臨床でよく見かける不整脈の1つである心室性期外収縮について学んでいきましょう!
心室性期外収縮の病態は?
通常の刺激伝導系では、洞結節から興奮が発生し、心房→心室方向へと刺激が伝わることで心臓の収縮が起こります。
しかし、上図のオレンジ部分のように心室から興奮が起こるのが今回の不整脈、「心室性期外収縮」です。
心房の興奮よりも先に心室が興奮を起こしてしまうことで、本来の予定よりも早いタイミングで心臓が収縮します。
「心室」が発生源で生じる、本来の時期とは外れた収縮なので、「心室性期外収縮」といいます。
心電図波形の特徴は?
心室性期外収縮の心電図波形(Ⅱ誘導)の特徴は以下の通りです。
- 先行する心房波(P波)が消失
- 幅の広い心室波(QRS波):0.12秒以上
心房よりも先に心室が興奮するからP波がなくて、
通常の刺激伝導系と違う伝播の仕方だから、QRS波がいつもと違うんですね!
心室性期外収縮の原因と症状は?
心室性期外収縮は健康な人にも見られる不整脈で、原因不明で症状がない場合は病的意義は低く、治療を必要としない場合が多いです。
心室性期外収縮発生の誘因としては、以下のようなものがあります。
- 誘因:過労、ストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙、薬剤性(ジゴキシン、抗不整脈薬など)
- 原因が明らかでない「特発性心室性期外収縮」は多い!
一方、以下のような基礎疾患に伴って心室性期外収縮が現れる場合もあります。
このような場合は、基礎疾患の治療が中心に行われますが、不整脈による自覚症状の強い症例や心室期外収縮の多い(総心拍数の10%以上)症例では治療が考慮されます。リスクや重症度については、以下で詳しく説明します。
心室性期外収縮の治療は?
一般に、器質的心疾患を伴わない心室期外収縮の予後は良いため、自覚症状が軽微なら抗不整脈薬投与は行われず、多くの場合経過観察となります。
ただし、自覚症状があり心室期外収縮の頻度が多い、または多源性の場合には薬物療法が考慮される場合があります。
器質的心疾患に伴う場合、心室期外収縮が多い症例では、期外収縮の減少より心機能の改善を認めることがあるため、薬物療法の適応です。
症状が強い場合や心室頻拍を同時に認める症例、薬物治療が無効な症例では、カテーテルアブレーションが考慮される場合もあります。
2020年ガイドラインにおける、心室期外収縮に対する薬物治療の推奨とエビデンスレベルは以下の通りです。「推奨クラスⅡb・エビデンスレベルB」の項目を抜粋しています。
・器質的心疾患のない症候性心室期外収縮患者に対するQOL改善を目的としたβ遮断薬や Ca拮抗薬の投与
・心室期外収縮頻発による心筋症患者に症状や左室機能改善を目的としたβ遮断薬やアミオダロンの投与
出典:「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」
リスク評価・LOWN分類について
LOWN分類とは?
心室性期外収縮の重症度を示したものに「LOWN分類」があります。
下表にお示ししますが、下に行くほど重症で危険度が高いです。
重症度 | 心電図 | 対応 |
0 | 心室性期外収縮なし | 経過観察 |
Ⅰ | 散発性(29個/時以下) | 経過観察 |
Ⅱ | 多発性(30個/時以上) | 治療 |
Ⅲ | 多源性心室性期外収縮 | 治療 |
Ⅳ a | 連発性(2連発) | 治療 |
Ⅳ b | 連発性(3連発) | 治療 |
Ⅴ | R on T | 直ちに治療 |
LOWN分類Ⅰ・Ⅱは同じ型の単発のPVCが1時間あたり何回起きているかで区別します。もちろん回数が多く、不整脈の頻度が多い方が重症度は高いです。
Ⅲは「多源性」ですが、これはすなわち「心室で興奮が生じる場所が1カ所ではない」ということです。そのため、下図のような様々な型のPVC波形が現れます。
なるほど。PVC波形の波形が複数ある場合は、心室の中でも異なる位置で興奮が発生しているということなんですね!
LOWN分類Ⅳになると、PVCが連発するようになります。下図は3連発ですが、幅広いQRS波が3回続けて生じています。
そして、最も重症度が高く、危険なPVCと言われているのが、下図の「R on T」です。
何が危険かというと、R on Tは心室頻拍や心室細動などの致死性の不整脈に移行する可能性が高いからです。R on Tは、下図のようにT波とPVCが重なるように生じる波形が特徴です。
リハビリはどこまで実施していい?
最後に、心室性期外収縮を認める症例に対して、リハビリを実施してのかという疑問に関してですが、基本的には「LOWN分類のⅣb以上」は中止を考慮します。
PVCが頻発している場合は、必ずバイタルサインや身体所見を確認し、血行動態に異常がないかを確認することが重要です。血行動態が悪化している場合や、致死性不整脈に移行しやすいR on Tが単発でも現れた場合は、直ちに運動を中止する必要があります。
また、運動をしていない時と運動中のPVC発生頻度の違いにも注意しましょう。
- R on T 型を発見したら、リハビリは実施しない
- 3連発以上のPVCの場合は、リハビリ中止を考慮(主治医と相談)
- 運動中に頻発する場合や、速いレートでの連発がある場合は要注意!
心電図を正確に見分けて、運動中の適切なリスク管理を行いたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献 ・2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン (日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン) ・心臓リハビリテーション学会編:指導士資格認定試験準拠 心臓リハビリテーション必携.2010 ・全部見えるスーパービジュアル循環器疾患.成美堂出版.2017
他の循環器用語の検索は以下のページで可能です。ぜひ参考にしてみてください。
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