こんにちは、心臓リハビリテーション指導士のぴんころです。
あなたは【CFS:臨床虚弱尺度】という評価をご存じですか?
いいえ、初めて聞きました。どんな評価なんですか?
「フレイル」という言葉はよく聞くと思いますが、CFSは「患者さんのADLや全身状態に応じて9つの段階に分類した、簡易的なスケール」です。では、詳しく見ていきましょう!
フレイルとは
CFS(臨床虚弱尺度)とは、フレイル評価方法の一つです。
「フレイル」という言葉は最近一般的に使用されるようになり、ご存じの方が多いと思いますが、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す“frailty”の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語です。
近い将来、要介護に進展する可能性が高い状態といえますが、一方でフレイルは不可逆的なものではなく、適切な介入によって再び健康な状態へ改善し得る可能性があるというのが特徴です。
またフレイルは下図に示されるように、筋力低下や運動機能低下などの身体機能の問題だけでなく、精神状態や認知機能などの心理的問題、社会的な問題などを含んだ複合的な概念であることため、多面的な評価が重要となります。
フレイルの評価について
J-CHS基準
フレイルの評価といえば、Friedが提唱した基準や、それを日本語版にJ-CHS基準が有名ですが、それらは体重や筋力、歩行速度などの身体機能評価と疲労感、運動習慣の問診が必要です。(下図参照)
CFS(臨床虚弱尺度)
一方、今回のテーマCFS(臨床虚弱尺度)は特殊な評価方法ではなく、患者さんの容姿や問診から確認できる主観的な評価です。
上図は日本老年医学会から2021年12月16日に発表された、日本語版のCFSです。
図からも分かるように1~9の段階から成り、1に近いほど生活自立度が高く、9に近いほど介護度が高いということになります。
おおまかなイメージでいくと、CFS1~3は「ADL自立(介護保険非該当)」、CFS4~5が「要支援」、CFS6~8が「要介護」の状態といった感じでしょうか。CFS9はADLには関係なく、「死期が近づいている状態」を指します。
CFSの有用性
CFSは専門的評価方法でないスケールであり、主観的評価であるにもかかわらず高齢者の予後を評価する有用な指標であることが報告されています。
TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)を施行した 1,215 例を対象として予後に関する比較検討を行った研究では、CFS グレードが上昇するごとに階段状に予後が悪化することが示されました。(下図参照)
また同研究において、CFSは Frailty項目の「血清アルブミン値、BMI、歩行速度、握力」と有意な相関が示されており、半定量的な評価項目である CFS ですが、定量的な指標と高い相関関係を示す正確な予後予測因子であることが示唆されました。
まとめ
- 簡易的なフレイル評価であるCFSについてお伝えしました。
- 簡便に評価できて情報共有がしやすく、予後予測にも有用なスケールということで、今後患者さんと関わる時にCFSを意識していきたいと思いました。
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
文献 1)日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 2)山田実:フレイルの重症化予防.PTジャーナル.Vol.55 No.3.2021 3)小幡裕明:心不全に伴う骨格筋異常.Heart View Vol.25 No.6, 2021 4)Shimura T, Yamamoto M, Kano S, et al: Impact of the Clinical Frailty Scale on Outcomes After Transcatheter Aortic Valve Replacement. Circulation135: 2013-2024, 2017. 5)加納誠士,志村徹郎,山本真功:TAVI と Frailty.循環器ジャーナル.Vol.66 no.2 ,2018. 6)田中哲人,徳田順之:フレイル高齢者のTAVIの適応を考える.Heart View Vol.24 No.5, 2020 7)平敷安希博:循環器疾患患者のフレイル・サルコペニアの評価.Heart View Vol.24 No.5, 2020
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