SPPBとは?
✔ フレイルが想定される症例、特に高齢者の下肢機能を中心に包括的に評価する方法
✔ 生命予後や、今後数年で歩行不能になるなどのADLの予測能に優れている
✔ 欧州のワーキンググループによるサルコペニア診断基準の項目の一つに、SPPB 8点以下が採用されている
「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」において、フレイルが想定される患者に対して Short Physical Performance Battery(SPPB)の評価を考慮することは、「推奨クラスⅡa、エビデンスレベルB」でエビデンスおよび見解から、有効・有用である可能性が高いとされています。
高齢心疾患患者さんの現状の身体機能把握やリハビリの効果判定、今後のADL予測などを目的に積極的に活用したい評価です!
SPPBの評価項目
- バランステスト(閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位)
- 4 m歩行時間
- 椅子からの5回の立ち上がり時間
SPPBは上記の3項目の評価で構成されます。
それぞれ0~4点の配点で、最低0点・最高12点の評価です。
点数が高いほど「下肢の機能」すなわち「運動機能」が良好ということになります。
0~3点 | きわめて低運動機能 |
4~6点 | 低運動機能 |
7~9点 | 中等度の運動機能 |
10~12点 | 運動機能良好 |
SPPBの方法
事前準備:物品と環境
- 椅子:手すりのない、高さ40㎝程度のもの
- 歩行距離の測定:直線4mを測定しスタート、ゴール地点を決めておく
- 歩行スペース:4mの歩行時間を測りますが、ゴール地点で歩行をストップするわけではないので、少なくとも6~7mの直線距離がとれるスペースが必要
評価方法①:バランステスト
まず、両足をくっつけた「閉脚立位」が10秒間出来るか確認します。
閉脚立位が可能であれば、次に図真ん中のように、片方の親指と反対側の踵がくっついた「セミタンデム」で立位を保持します。足の前後はどちらでもかまいません。
「閉脚立位」「セミタンデム」はそれぞれ10秒保持できなかった時点で次の評価に移行します。
どちらも10秒保持出来た場合、最後に両足を前後に一直線になるようにした「タンデム」で立位を保持します。
閉脚立位10秒保持✖ | 0点 |
閉脚立位10秒保持〇、セミタンデム10秒保持✖ | 1点 |
閉脚立位・セミタンデム10秒保持〇、タンデム3秒未満 | 2点 |
閉脚立位・セミタンデム10秒保持〇、タンデム3~9.99秒 | 3点 |
閉脚立位・セミタンデム10秒保持〇、タンデム10秒可能 | 4点 |
タンデムは高齢者には難易度高めです。評価に夢中になって、患者さんが転倒してしまわないように注意しましょう!
評価方法②:4m歩行時間
事前準備で設けた「スタートライン」につま先を揃えて立ち、普通速度で4m歩行する時間を計測します。
どちらか一方の足が「ゴールライン」をこえたらゴールとし、被検者にはゴールラインで止まらないように事前説明します。
歩行補助具が必要な方は、使用して問題ありません。
2回計測し、良い方の結果を評価に採用します。
4.82秒未満 | 4点 |
4.82~6.2秒 | 3点 |
6.21~8.7秒 | 2点 |
8.7秒以上 | 1点 |
歩行困難 | 0点 |
秒数がキリのいい数字ではないので覚えにくいですが、キーとなる数字(赤字)を覚えておくと良いと思います!
評価項目③:5回立ち上がり時間
評価タイトルから分かる通り、椅子から5回立ち上がるタイムを計るわけですが、立ち上がり方に注意が必要です。
図のように腕を前で組んで、上肢を使わずに立ち上がる評価のため、まず一度その方法が可能かどうか確認しましょう。この時点で出来ないようなら、評価終了となります。
座った状態から開始し、起立→着座を出来るだけ早く繰り返します。5回目の起立が完了するまでのタイムを計測します。
「座った状態」で開始、「立った状態」で終了です!
11.19秒未満 | 4点 |
11.2~13.69秒 | 3点 |
13.7~16.69秒 | 2点 |
16.7秒以上 | 1点 |
60秒以上または実施困難 | 0点 |
補足:椅子の高さは、調べたところ完全に何cmと決まっているわけではなさそうですが、施設内で使用する椅子を統一し、再現性のある評価にする必要があると思います。
合計点を計算
3項目の結果が分かったら合計点を計算し、被検者の現在の運動機能が、前述したどの状態にあるのかを評価します。
患者さんへの結果のフィードバックする際には、SPPBの点数が低くなることで「転倒リスクが高くなること」や、「今後ADLが低下してしまう可能性が高くなること」、「生命予後が悪くなること」、「入院した場合、入院が長期化しやすいこと」などをお伝えすると分かりやすいと思います。
患者さん自身に現状を把握していただくことで、運動を行う意味やきっかけ作りになるといいと思います。
また、定期的に評価することで運動療法の効果判定、継続意欲の向上につながると考えます。
他の心臓リハビリ関連用語の検索は、以下のページをご参照ください。
参考文献 ・日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン:2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン ・Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol 1994; 49: M85-M94.
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