こんにちは。心臓リハビリテーション指導士のぴんころです。
この記事では「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」を参考に、
心房細動のリハビリテーションについてお伝えします。
心房細動は、臨床で最も多く遭遇する不整脈の一つです。
運動療法実施上の注意点や、中止基準を知ることはリスク管理を行う上で大変重要です。
(参考:心房細動の病態・原因など「心房細動とは?」)
心房細動があってもリハビリをしてもいいの?
まず始めに浮かぶ質問は、「心房細動の方にリハビリをしていいのか」ということではないでしょうか。
ガイドラインでは以下のように示されています。
現時点でAF患者に対する運動療法を推奨したガイドラインはまだないが、AF患者に対する運動療法の有用性についてエビデンスが蓄積してきている
「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」より引用
- 運動耐容能が低下した、または心不全を合併する心房細動患者に対し、運動耐容能とQOLの改善を目的に運動療法を考慮する
- 肥満を合併した心房細動患者に対し、心房細動の負担と症状の軽減を目的に体重減量および他の危険因子の管理を考慮する
※推奨クラスⅡa:エビデンス・見解から有効・有用である可能性が高い
※エビデンスレベルB:単一のランダム化介入臨床試験またはランダム化介入でない大規模な臨床試験で実証されたもの
つまり、現時点では心房細動患者さんに対して、上記のような目的でリハビリを行うことは有効である可能性が高いということです。
実際、心房細動を持つ多くの患者さんにリハビリが実施されています。循環器以外の疾患で入院されている患者さんで、以前から心房細動を有している症例も少なくありません。ここで大切なのは、運動療法の目的を明確にし、リスク管理を適切に行うことです。
ここからは、実際のリハビリ場面を想定して考えていきましょう!
リハビリを実施する前に確認すること
- 基礎心疾患の有無
- 心不全増悪の有無(心不全がコントロールされているか)
- 投薬状況
- 脈拍の状況(安静時、活動時など)
- 脳梗塞発症リスク
心房細動を有する患者さんのリハビリを行うにあたって、事前の情報収集はとても重要です。
心房細動を発現に関与する基礎疾患の有無や、心不全増悪をきたしている場合は、そのコントロール状況を把握します。
また、心房細動に対してどのような投薬がされているのかを確認し、「リズムコントロール」、「レートコンロトール」目的の治療がされているのか、脳梗塞リスクに対して抗凝固療法がなされているのかなどが確認のポイントになると思います。
入院中で、随時心電図をモニタリングできる場合には、心電図リコールを確認し、夜間・安静時の心拍数や、活動時の心拍数を確認することで、リハビリ中の心拍応答の予測に役立つ思います。例えば、この時トイレに歩行するだけで脈拍が過度に上昇している場合などは、リハビリ中の心拍数上昇に注意が必要ということになります。
「心拍数コントロール不良の頻脈性または徐脈性不整脈」は運動療法の相対禁忌です。
(参考:心臓リハビリの運動療法の禁忌について)
リハビリ中に注意すべき症候
- 活動時の心拍反応(心拍数がコンロトールされているかを確認)
- 運動中の自覚症状、他覚所見
運動中の心電図が確認できる場合は、リハビリの運動前・運動中・運動後の脈拍変化を確認しましょう。
心電図モニタリング出来ない場合は、下図のように直接脈拍を確認します。血圧計での脈拍測定は、心房細動の方の場合、正確ではないことが多いため注意してください。
運動療法の進め方としては、運動強度を徐々に上げていくことが重要です。まずは、起き上がりなどの基本動作や、座位での簡単な運動での心拍反応を確認します。
これらの動作で心拍数がコントロール出来ていることが確認出来たら、次のステップへ進めて行きます。
「起立足踏み→短距離の歩行→歩行距離を徐々に延長」のような形で、段階的に運動強度を上げ、その都度心拍コンロトールが出来ているかを確認しましょう。
また、「運動療法導入後に心不全の自覚症状や他覚所見があれば、運動強度を下げることを含め、心不全に対する加療を行う必要がある」とされています
運動療法中に発作性心房細動などの不整脈が新たに出現した場合には、直ちに運動療法を中止し、主治医に報告する必要があります。
慢性心房細動に対する安静時・運動時の至適心拍数は明らかにされていませんが、ACCF/AHAのガイドラインでは,エビデンスからではなく経験
則から、脈拍は安静で60~80/min、中強度の運動下では90~115/minが推奨されています。
また、運動中の心拍数過上昇に注意し、心拍数が150/min以下の負荷で運動を実施することが推奨されています。
(参考:心臓リハビリ実施中の運動中止基準について)
リハビリ後~翌日に確認すること
- リハビリ中の心電図リコールで、運動に伴う不整脈誘発はなかったか
- リハビリ終了後の心不全症状の増悪はなかったか
リハビリ終了後に確認すべき事項としては、心電図リコールが確認できる場合は、リハビリ中・リハビリ後の心電図を確認します。
また、翌日には心不全増悪兆候がないかを確認し、運動負荷量が適切であったかを日々確認するといいと思います。
まとめ
- 心房細動のリハビリについてお伝えしました。リハビリ実施の参考になれば幸いです。
- 不整脈がある方へのリハビリには注意が必要ですが、正しい知識を持つことで過度におそれることなくリハビリが実施できると思います。
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献 ・日本循環器学会 / 日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」 ・日本心臓リハビリテーション学会「心不全の心臓リハビリテーション標準プログラム (2017 年版)」 ・心臓リハビリテーション学会編:指導士資格認定試験準拠 心臓リハビリテーション必携.2010
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