こんにちは、心臓リハビリテーション指導士のぴんころです。
今回は「狭心症」についてお伝えします。
狭心症を大きく分類すると以下の4種類があります。
- 労作性狭心症
- 冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症
- 不安定狭心症
- 無症候性心筋虚血
この記事を読めば、この4つの症状の違いや病態、治療法について分かります。ぜひ最後までよろしくお願いします!
狭心症とは
まず「狭心症」とは、心筋が一過性に酸素不足の状態に陥ることにより、胸痛や心電図変化などをきたす代表的な虚血性心疾患のことをいいます。
よく質問に挙がる「心筋梗塞」と「狭心症」の違いについてはこちら↓
【心筋梗塞】冠動脈が完全に閉塞して、血流が大幅に減少あるいは途絶えることにより、心筋の一部が壊死している状態。
【狭心症】冠動脈が何らかの原因で狭くなって、血流が一時的に流れにくくなっている状態。
狭心症は「一時的」「血管は完全に詰まっていない」というのがポイントですね!
労作性狭心症
労作性狭心症の症状
「労作性狭心症」は、その名の通り「労作」をしたときに起こる狭心症です。
安静時には症状はなく、動いた時に症状が出るのが特徴です。
例えば、階段昇降や重たいものを持った時など、決まった動作をした時に起こることが多いです。
心筋が酸素を必要とする量が、供給量を限界を超えたときに心筋虚血が生じるため、ある一定の負荷を超えた運動をした時に、このような症状が起こります。
✅動作をした時に起こる「前胸部絞扼感」が特徴
✅前胸部だけでなく、顎や歯、肩、上腕、上腹部などへの放散痛をみとめることもある
✅安静に戻ると胸部症状は消失するもの特徴
労作性狭心症の原因
生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、喫煙、加齢、家族歴のなどの危険因子により動脈硬化が生じ、冠動脈の狭窄が進むことで生じます。
運動時の冠血流量は、冠動脈の狭窄度が50%くらいから減少し始め、70%を超えると急激に減少し虚血を生じるといわれています。
そのため、この狭心症を生じる症例は、冠動脈に有意な狭窄が存在する可能性が高いということになります。(参考:冠動脈について)
冠攣縮性狭心症
冠攣縮性狭心症の症状
「冠攣縮性狭心症」とは冠動脈が一時的に痙攣したような状態となり、冠動脈の内腔が狭窄・閉塞し、冠血流の減少あるいは途絶をきたすことで虚血を生じる病態をいいます。
✅夜間~早朝、安静時に起こる「胸部圧迫感」が特徴
✅毎日出現することもあれば、数カ月~数年出現しないこともある(不定期)
✅症状は数分の場合もあれば、数時間持続するケースもある
冠攣縮性狭心症の原因
冠攣縮の原因としては、血管内皮細胞の障害があげられており、動脈硬化との関連性が示唆されています。
過呼吸や飲酒で誘発されることもあるため、冠攣縮性狭心症の抑制には、生活習慣の改善(禁煙、摂取、冠危険因子の是正)やストレスの軽減が必要と考えられます。
不安定狭心症
「不安定狭心症」は、冠動脈内におけるプラークの破綻や、それに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄・閉塞する病態をいいます。
不安定狭心症は「急性冠症候群(ACS)」の一つとされており、心筋梗塞への移行や突然死に至る可能性のある、重症で危険な狭心症です。
✅4つのうち最も緊急度の高い病態
✅安静時、労作時問わず胸痛が長時間続く
✅冠動脈は完全には詰まっていないが、今にも詰まりそうというイメージ
狭心症の治療については以下で再度説明しますが、不安定狭心症の場合、薬物療法で症状が安定しない場合、冠動脈の血行再建が必要となります。
血行再建の方法には、PCI(経皮的カテーテルインターベンション)、CABG(冠動脈バイパス術)があります。
無症候性心筋虚血
「無症候性心筋虚血」は、胸痛あるいはそれに関連する症状を伴わない一過性の心筋虚血の病態をいいます。
発生機序としては、虚血の程度が軽い場合や範囲が狭い場合、患者さんの疼痛閾値が高い場合などが考えられます。
症状がないため発見が難しく、検診などで偶然見つかるケースも多いようです。心臓が虚血状態であることに気づかず、無理をすることは心臓の負担になるため、早期に発見することは長期的なメリットが大きいと思います。
✅無症状だが、実際は心筋が虚血状態になっている病態
✅糖尿病患者さんや高齢者など、疼痛の閾値が高い方に比較的多い
狭心症の診断
狭心症の診断では、問診で以下のような内容を確認し、狭心症の種類や他疾患との鑑別を行います。
- 胸痛の部位、性状(締め付ける・奥が痛むなど)、持続時間
- 胸痛が誘発される状況、または軽快する因子
- 症状に再現性があるかどうか
検査では一般的に心電図、血液検査、運動負荷心電図、心筋シンチグラフィーなどの検査が行われます。
これらの検査で冠動脈の狭窄が疑われる場合は冠動脈造影(CAG)、あるいは冠動脈CT・心臓MRI検査を行います。これにより冠動脈の実際に狭窄している部位を特定することができます。
狭心症の治療
労作性狭心症の治療には「薬物療法」と「再灌流療法」があります。
- 薬物療法
- 再灌流療法:経皮的冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス術(CABG)
薬物療法では、①硝酸薬やCa拮抗薬を使用して「冠動脈を拡張させる」、②β遮断薬を使用して「心筋の酸素需要を減らす」、③スタチンを使用して「プラークを減らして症状の進行を遅らせる」方法などがあります。
冠動脈に狭窄があり薬物療法で十分な効果が得られない場合や、不安定狭心症で冠動脈治療を急いだほうがいい場合は「再灌流療法」が必要となります。
再灌流療法には、カテーテルを使用した経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や、開胸手術である冠動脈バイパス術(CABG)があります。左冠動脈主管部の病変や、冠動脈3枝の病変の場合は基本的にCABGの適応となります。
【まとめ】狭心症の4種類の症状
今回の内容を簡単にまとめると以下の通りです。
- 労作性狭心症:一定の負荷がかかった時に起こる胸痛
- 冠攣縮性狭心症:夜間や早朝に不定期に起こる胸痛
- 不安定性狭心症:安静時でも起こる長時間の胸痛、緊急性の高い狭心症
- 無症候性心筋虚血:症状はないが、心筋が虚血に陥っている
「狭心症」といっても、病態や重症度はそれぞれ全く異なります。正しく理解して臨床につなげましょう!
1つでも参考になることがあれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
参考 ・日本循環器学会ほか:慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版) ・日本循環器学会ほか:急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版). ・上月 正博:心臓リハビリテーション 第2版.医歯薬出版株式会社.2019 ・HEART nursing vol.35 no.4 .2022.p17-26
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