【心リハ用語解説】BNP、NT-proBNP

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この記事では以下の用語について解説しています
  • BNP
  • NT-proBNP
ぴんころ
ぴんころ

BNPとNT-proBNPは心不全のバイオマーカーとして最も一般的なもので、スクリーニングから診断、予後予測まで幅広く用いられてます

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BNP/NT-proBNPとは

BNP

  • BNPは主として心室で合成される心臓ホルモン
  • BNPは心室の負荷により分泌が亢進し、血中濃度が上昇する
  • BNPは心室への負荷の程度を鋭敏に反映する生化学的マーカー

NT-proBNP

  • 心筋より産生されたproBNPは、コリン酵素分解によりBNPNT-proBNPに1:1の割合で分解される
  • NT-proBNPは、BNPと同様に心不全診断補助に使用される

BNP/NT-proBNPの上昇=「心室に負荷がかかっている心不全が増悪している可能性が高い」ことを意味します

基準値は?

下記は、日本心不全学会が示している「BNP/NT-proBNP値を用いた心不全診療」についてまとめられた図です。

BNP,NT-proBNP 値の心不全診断へのカットオフ値 
「日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について」より引用

基準値 BNP≦18.4pg/mL

    NT-proBNP≦55pg/mL

●BNP40-100(NT-proBNP125-400)pg/mLの場合:軽度の心不全の可能性があります。危険要因が多い症例や心不全を発症する基礎疾患を持っている症例では、胸部X線、心電図、心エコー図検査の実施が推奨されます。ただ、重症心不全である可能性は低く、BNP上昇の原因がある程度特定できれば、そのまま経過観察となる可能性が高いです。

●BNP125-400(NT-proBNP400-900)pg/mlの場合:治療対象となる心不全である可能性があり、心エコー図検査を含む検査を早期に実施し、原因検索が推奨されます。


●BNP200(NT-proBNP900)pg/ml以上の場合:治療対象となる心不全である可能性が高く、原因検索に引き続き、症状を伴う場合は心不全治療開始を考慮される状態です。

ぴんころ
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ちなみに、心臓リハビリテーション処方を行うための慢性心不全の診断基準BNP≧80pg/mLです

判断の注意点は?

BNP/NT-proBNPには、以下の濃度増加因子・低下因子があります。

濃度増加因子
心機能低下・腎機能低下・高齢・全身炎症
濃度低下因子
肥満

BNP、NT-proBNPともに腎機能の低下や、加齢、全身炎症などで血中濃度が上昇します。

特にNT-proBNPはその代謝の殆どが腎臓からの濾過による排泄に依存しているために軽度の腎機能低下でも影響を受け、eGFR30ml/min/1.73m2未満の症例では増加の程度が大きくなります。

ぴんころ
ぴんころ

「BNP/NT-proBNPが上昇するのは、心機能が低下したときだけではない」ということを頭に入れておきましょう

逆に、肥満者では非肥満者より血中濃度は低下し、低値を示します。この場合、BNP/ NT-proBNPだけでは心不全の程度を過小評価してしまう可能性があるので、症状や症候、その他の検査結果を十分に加味して判断する必要があります。

目標値は?

基本的に、BNPやNT-proBNP値をある数値以下に維持しなければいけないという絶対的な目標値はありません

前述したように、BNP/NT-proBNPは合併疾患や体型によって個人差が大きいため、目標値を設けたり他者と比較するよりは、個人内での変動を重要視すべきだとされています。

心不全管理中のBNPやNT-proBNP値が前回と比較して大きく上昇した時には、何か理由があるためその原因を探索し、早目の介入が必要となります。

実臨床では個々の症例に最適なBNP値やNT-proBNP値を見つけ、その値を維持する包括的な疾病管理、つまり、生活習慣の是正(断煙、断酒、減塩、食事や運動の適正化など)と適切な薬物治療が重要となります。

参考
・日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
・日本心不全学会HP:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について(http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp201300403.html

他の循環器用語(略語)の解説・索引は以下のページで可能です。ぜひ参考にしてみてください。

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