【心リハ用語解説】心房細動の血栓塞栓リスクの評価

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この記事では以下の用語について解説しています
  • CHADS2(チャッズツー)スコア
  • CHA2DS2-VASc(チャッズバスク)スコア
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CHADS2、CHA2DS2-VAScスコアとは?

非弁膜症性心房細動では、血栓塞栓症の危険因子が集積すると心原性脳塞栓の発症率が上昇することが知られています。

そこで血栓梗塞症発症リスクの評価を行うために用いられるのが、CHADS2スコアCHA2DS2-VAScスコアです。

これらのリスク評価を行ったうえで、適切な抗凝固療法が選択されます。

「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」では、臨床に広く普及させる目的により、より簡便な CHADS2スコア が採用されています。

ぴんころ
ぴんころ

それでは、それぞれの評価内容について見てきましょう!

CHADS2 スコア

頭文字危険因子点数
C心不全
H高血圧(治療中も含む)
A年齢(75歳以上)
D糖尿病
S2脳梗塞/TIA(一過性脳虚血発作)の既往
CHADS2 スコア

CHADS2スコアは心不全、高血圧、年齢(75 歳以上)、糖尿病、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往の5項目からなる評価です。

それぞれの項目に当てはまれば各1点、脳梗塞/TIAのみ2点が追加され、合計点がCHADS2スコアとなります。

最大スコアは6点で、0点が低リスク、1 点が中等度リスク、2 点以上が高リスクとなります。

この評価法の利点としては、最初にも示した通り簡便に評価できる点です。

CHADS2スコアが1点以上、つまり上記の1項目でも当てはまれば抗凝固療法が考慮されます。

CHA2DS2-VASc スコア

一方、 CHA2DS2-VAScスコアは以下の8項目からなります。

CHADS2スコアにV(Vascular disease:血管疾患)、A(Age:年齢65~74歳)、Sc(Sex category:性別)が加わったものです。

年齢75歳以上、脳卒中/TIA/血栓塞栓症いずれの既往がある場合は2点ですが、それ以外は各1点で、最大スコアは9点です。

頭文字危険因子点数
C心不全 / 左心室機能不全
H高血圧
A2年齢(75 歳以上)
D糖尿病
S2脳卒中 / TIA / 血栓塞栓症の既往
V血管疾患(心筋梗塞の既往、末梢動脈疾患、大動脈プラーク)
A年齢(65~74 歳)
Sc性別(女性)
CHA2DS2-VASc スコア

欧州や米国など、世界的にはこの CHA2DS2-VASc スコアが一般的に利用されているが、日本の研究では、CHA2DS2-VASc スコアで追加された因子[年齢(65~74歳)、血管疾患、女性]は、日本人の抗凝固療法未施行例における血栓塞栓症の有意な危険因子ではないことが分かっています。

このこともCHADSスコアが日本で採用される一因となっています。

ただし、CHA2DS2-VASc スコアが優れた点は、 CHADS2スコアにおける低リスク患者の中で脳梗塞リスクを有する患者をひろいあげることが可能となることです。

CHADS2 スコアが低リスク例の判別には限界がある一方、CHA2DS2-VASc スコアは、特に抗凝固療法が不要な真の低リスク例の検出に有用とされています。

<補足>CHADS2 スコアに含まれないリスク因子

「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」 において抗凝固療法を「考慮可」とするその他の危険因子として、以下の7項目が挙げられています。

  1. 心筋症
  2. 年齢(65 ~ 74 歳)
  3. 血管疾患(心筋梗塞既往,大動脈プラーク,末梢動脈疾患など)
  4. 持続性・永続性心房細動
  5. 腎機能障害*2
  6. 低体重(≦ 50 kg)
  7. 左房径(> 45 mm)
  • 心筋症肥大型心筋症独立した脳梗塞の危険因子であることが報告されています
  • 年齢:カナダ心臓病学会のガイドラインでは、ほかの危険因子の有無にかかわらず65 歳以上の例には抗凝固療法が推奨されています(日本の検証では、ハザード比は 1.0 ~ 1.3 とやや高いものの有意な因子とはなっていません )
  • 血管疾患:血管疾患が危険因子として指摘されているが、日本の検討では、いずれも有意な因子とはなっていません
  • 持続性・永続性心房細動:持続性または永続性心房細動の血栓塞栓症に対するリスクが発作性心房細動より高いことが示されています
  • 腎機能障害および低体重:Fushimi AF Registry において、体重 50 kg 以下およびクレアチニン・クリアランス(CCr)30mL/分未満が血栓塞栓症に対する有意な因子であったとされている
  • 左房径:心エコー図所見では、左室収縮障害、左房機能異常、左房径(>45mm)あるいは、経食道心エコー図における左房内もやもやエコー、左心耳内血栓、左心耳駆出ピーク血流速度の低下(< 20 cm/ 秒)などが血栓塞栓症の危険因子として報告されています

※他の循環器用語(略語)の解説・索引は以下のページで可能です。ぜひ参考にしてみてください。

参考文献
・日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」

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