【高齢だとどう違う?】心不全に対する心臓リハビリテーション

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ぴんころ
ぴんころ

こんにちは、理学療法士のぴんころです。

私は心臓リハビリテーション指導士の資格を取得し、急性期病院で心臓リハビリを行っています。

今回のテーマは「高齢心不全患者さんに対する心臓リハビリ」です。

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増加する高齢心不全患者

最近「心不全パンデミック」という言葉をよく耳にしますが、日本の心不全患者さんは年々確実に増加しています。

心不全の有病率は加齢とともに増加します。米国のFramingham研究によると、50歳代での慢性心不全の発症率はおよそ1%であるのに比して、80歳以上になると10%にも達すると言われています。

少子高齢化が進む日本では心不全患者は今後も増加し、患者層は高齢化していくことが予想されます。

2016年には日本心不全学会が「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」という、高齢心不全患者を対象とした治療指針を世界に先駆けて発表しました。

2021年改訂の「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」では、特殊な患者群として「高齢心疾患患者」を独立した項目として挙げており、これらのことからも今後高齢心不全患者さんとの関わりが増加し、重要となってくることが示唆されます。

高齢心不全患者の特徴

「高齢心不全患者の治療関するステートメント」では、特徴は以下のように挙げられています。

第一の特徴として併存症が多いことが挙げられます。上の表にも一部示されていますが、高齢心不全患者に多い併存症として心房細動慢性腎臓病(CKD)、貧血、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、悪性腫瘍、抑うつ、せん妄などが挙げられます。

多疾患併存あるいは重複障害を呈する患者さんは、治療が長期化したり難渋するケースが多く、実際リハビリテーションにも苦労することが多いです。しかし、これらの患者さんにリハビリを控えた方が良いというわけではなく、患者さん個々の病態や自覚症状を適切に把握し、その時の状態にあったリハビリテーションを提供していくことが必要です。

心不全の状態だけでなく、全身状態や心理面を含めた広い視点で患者さんの全体像を捉えることが重要といえます。

第二の特徴は,運動機能障害を有する患者が多いことです。心臓リハビリテーションでは、一般的に歩行や自転車エルゴメーターなどの有酸素運動とレジスタンストレーニングが推奨されていますが、高齢心不全患者さんではこれらが思うようにできないことが多いです。

変形性膝関節症による慢性的な膝関節痛、脳梗塞後遺症による不全麻痺など理由は様々ですが、高齢になる程これらの症状を有する方も増えていきます。このような場合は、歩行で膝が痛い方には自転車エルゴメータ―で膝への負担を軽減する、不全麻痺の影響がある方には自動アシスト付きのエルゴメーターを選択するなど、目的を明確にして患者さん個々が可能な運動療法を提案していくことが必要となります。

第三の特徴はフレイル(虚弱)の存在です。心不全増悪に伴う食欲不振や低活動により、体重減少や筋力低下を引き起こします。高齢者は若年者と比較して、短期間の不活動でもフレイルに陥りやすいため、栄養状態や全身状態を確認しながら早期のリハビリ介入が重要となります。

高齢者の場合、一度フレイルの状態になると若年者に比べて回復に時間を要するため、予防が大切です。リスク管理をきちんと行い、急性期にはなるべくADL低下を起こさないように介入します。

ぴんころ
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以上のことをまとめると、「高齢心不全患者さんは心不全以外にも多くの疾患を持っていることが多く、元々体が弱っている人が多いため、個々の状態に合わせたリハビリをなるべく早期から行いましょう!」ということです。

理学療法士
理学療法士

高齢の方はご自身の強い考えを持っておられる場合があるので、こちらの意見を伝えるばかりではなく、患者さんの話をよく聞くことも重要ですよ。私は、まず患者さんを理解することから始めます。

最近では高齢独居の方や、高齢夫婦世帯が増えてきているため、生活背景や家族の介護力についても早めに聞いて、他職種の方たちと情報共有することも大切です!

リハビリの効果

高齢心不全患者さんに対する運動療法の有効性のエビデンスは、まだ十分とはいえない現状があります。

『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』によると、「高齢心疾患患者に対する心リハの予後や運動耐容能に与える効果は、疾患によっては見解が一致していないが、QOLは改善されるとのエビデンスが確立されつつある」とされています。

同ガイドラインで高齢の心不全患者に対しQOL の改善を目的に運動療法を行うことは「推奨クラスⅠ」「エビデンスレベルA」で有効性が示されています。

また、高齢の心不全患者に対し運動耐容能や身体機能の改善を目的に有酸素運動やレジスタンストレーニング,バランストレーニングや柔軟体操から構成される複合的な運動療法を考慮することは、「推奨クラスⅡa」「エビデンスレベルA」で有用である可能性が高いとされています。

フレイル・サルコペニアを合併する高齢の心疾患患者に対し運動耐容能や筋力の向上を目的に運動療法と栄養療法の併用を考慮することは、「推奨クラスⅡa」「エビデンスレベルB」で、エビデンスがやや劣りますが有用である可能性が高いとされています。

これから対象者が増え研究が進んでいく分野だと思うので、今後もアンテナを高くし、情報収集していきたいと思います。

リハビリの実際

◎急性心不全では日本心臓リハビリテーション学会の「心不全の心臓リハビリテーション標準プログラム(2017年版)」に準拠して離床を進めるとともに,早期から合併疾患,心理的要因,社会的要因を評価し,適切な治療を行う

◎血行動態不安定や身体機能低下によって離床が進まない場合は,必要に応じて多職種による退院支援カンファレンスを行うことが望ましい.

◎血行動態が不安定で早期離床や積極的な運動療法を実施できない症例に対しては,他動運動を中心としたデコンディショニング予防目的の理学療法を実施する

◎病態が安定した回復期以降は,CPXに基づく運動処方が推奨される.

「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」 より引用

基本的には、高齢者でない場合と同様の手順で心臓リハビリテーションを進めて行きますが、高齢心不全患者さんの場合は、離床プログラムが順調に進むことは少ないです。そのため、早期からの多職種による退院支援カンファレンスは重要で、先を見据えた準備を早期から行います。

特に介護保険の申請には時間を要するため、必要になると予想される場合には早めに準備していくとスムーズに話が進むでしょう。

リハビリに関しては、日々変化する病状を正確に把握して、今は「リハビリを頑張れる時期」か「積極的に行うべきではない時期」なのかを見極める力が必要です。心不全の再増悪に注意しながら、患者さんにとって効果のあるリハビリを提供できるように知識を増やしていきたいです。

リハビリ実施上の注意点

目的・対象主な注意点
脳血管障害,貧血めまい、ふらつきへの対応
肝・腎障害障害臓器の血流量低下
前立腺疾患自転車エルゴメータは避ける
骨関節疾患症状や状態に応じて負荷を回避または関節周囲の筋力を増強
閉塞性肺疾患運動に伴う低酸素血症
消化器疾患(癌を含む)エネルギーの摂取量と消費量のバランス
末梢動脈疾患有酸素運動は歩行を推奨
下肢潰瘍に留意
生理的予備能の低下心拍数や血圧変動が大きく、当日の体調により運動処方を決定
脱水や電解質異常
フレイル個々の状態に応じてバランス機能改善を図る
低負荷高回数の運動処方
バランス機能障害、視覚障害運動療法中の転倒
リビングウィルの尊重運動療法が身体的苦痛を与えていないか留意
患者との対話を有効活用
患者の目標や人生観を把握
「 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 」より引用

運動療法を行う上で高齢者が有する合併症や特性への配慮を行うことは、リハビリ中の事故を予防できるとともに、リハビリに対する患者さんの満足度向上につながると思います。上記のような注意点を頭に入れておくことで、これまでより一段階質の上がったリハビリを提供できるのではないでしょうか。

まとめ・参考文献

  • 高齢心不全患者さんに対する心臓リハビリテーションについて、ガイドラインの情報を中心にまとめました。
  • 最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
1) Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al.; Cardiovascular Health Study Collaborative Research Group. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-M156.
2)日本心不全学会ガイドライン委員会編:高齢心不全患者の治療に関するステートメント.2016
3)2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン)
4)青柳陽一郎編:Monthly Book MEDICAL REHABILITATION.No262 超実践!心臓リハビリテーション治療‐初心者からエキスパートまで‐.全日本病院出版会.2021

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