心臓カテーテル治療|PCIの目的や手順、合併症、略語を詳しく解説

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心臓カテーテル治療とは

心臓カテーテル治療とは、「カテーテル」と呼ばれる細い管を、腕や足の血管から心臓まで挿入して行う治療です。

心臓の周りを走行する冠動脈極端に狭くなった場合や、詰まった場合に、カテーテルを使用してその部分を広げます。

この治療法を経皮的冠動脈インターベンションPCI;percutaneous coronary intervention)といいます。

心臓カテーテル治療のイメージ図

心臓カテーテル治療の目的と対象疾患

心臓カテーテル治療の目的は、「冠動脈への血流を改善させ、心筋に必要な栄養や酸素を供給すること」です。

対象となる疾患は、心筋梗塞狭心症といった冠動脈の閉塞・狭窄により心筋が虚血状態に陥っている状態である「虚血性心疾患」です。

心筋梗塞・狭心症のイメージ図 (出典:https://www.kango-roo.com/)
ぴんころ
ぴんころ

虚血性心疾患に対する治療には、開胸手術である冠動脈バイパス術(CABG)もあります。カテーテルを使用するPCIは、CABGと比較して「体への侵襲が少ないのが特徴です。

心臓カテーテル治療の実際

PCI治療前の処置

心臓カテーテル治療を受ける前の処置としては以下のような準備や処置があります。

  • 内服薬の確認
  • カテーテル穿刺部位の剃毛
  • 点滴ルートの確保
  • 検査前にトイレをすませる(尿道留置カテーテルを入れる場合あり)

PCI治療の実際

PCI治療はおおまかに、次のような流れで行われます。ただし治療を受けられる病院によって手順が異なる場合があるため、参考程度にご覧ください。

  1. カテーテル穿刺部位の局所麻酔をして、カテーテルを挿入する
  2. 造影剤を使用して、冠動脈の状態を確認。狭窄・閉塞部位を特定する。
  3. 血管の狭窄・閉塞部位でカテーテル先端についたバルーンを膨らませ、ステントを留置する(下図参照)。
  4. カテーテルを抜き治療終了
カテーテル挿入~ステント留置までのイメージ図

PCI治療の記録は、冠動脈の狭窄部位程度が以下のように記載されます。 

例)RCA #1 90%狭窄

どの部分に治療が行われたのか、また、残存狭窄があるのか情報収集することで、治療後のリスク管理につながります。

冠動脈について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

PCI治療後 

治療終了後はカテーテル穿刺部位の止血心電図検査を行います。

穿刺部位によって止血時間や方法が異なりますが、検査後は数時間ベッド上での安静が必要になります。

PCI治療の所要時間

PCI治療の所要時間は約 60~120 分です。患者さんの病状により治療時間は異なります。

心臓カテーテル治療の注意点・リスク

PCI治療中や治療後の合併症には、以下のようなものが挙げられます。

  • 穿刺部の出血および血腫形成
  • 造影剤アレルギー
  • 亜急性冠閉塞(subacute thrombosis;SAT)
  • 不整脈
  • 心不全の増悪
  • 心タンポナーデ
  • 迷走神経反射

また、糖尿病患者さんに関しては、 造影剤使用によって乳酸アシドーシスの危険性があるビグアナイド系血糖降下薬の休薬が治療の48時間以上前から正しく行われているかの確認する必要があります。

心臓カテーテル治療でよく使用される略語

最後に、心臓カテーテル治療において臨床で使用される用語・略語について簡単に解説します。

ぴんころ
ぴんころ

私は、最初略語がたくさん出てきて、とても混乱しました。

一緒にまとめて確認して、カルテや会話の内容を理解できるようになりましょう!

POBA(バルーン形成術;percutaneous old balloon angioplasty)

バルーンを使用して冠動脈を拡張するのみの治療。再狭窄や合併症のリスクあり。

DCB(薬剤コーティングバルーン;drug coated balloon)

バルーンだけで良好な開大をえられた病変に対して使用される、薬剤をコーティングしたバルーン。

血管壁に薬剤を塗布することで、再狭窄を予防する効果がある。

BMS(ベアメタルステント;bare metal stent)

1988年に初めて登場した金属ステント。治療後に血管が再び狭くなる「ステント内再狭窄」という問題があった。

DES(薬剤溶出性ステント;drug eluting stent)

2001年に、再狭窄の問題を解決するために登場したステント。

細胞増殖を抑える薬剤を含んだポリマーをコーティングしたステントで、再狭窄のリスクが大幅に軽減した。

CAG(冠動脈造影検査;coronary angiography)

カテーテルを冠動脈まで進め、造影剤を注入しながら連続的にX線撮影を行い、冠動脈の狭窄や閉塞を診断する方法

ad hoc PCI(アドホックPCI)

診断のための冠動脈造影に引き続いて、同日中にPCIを実施すること。つまり、カテーテル検査で冠動脈に狭窄や閉塞がみつかり、そのまますぐに治療すること。

CTO(慢性完全閉塞;chronic total occlusion)

冠動脈が3か月以上完全に閉塞している病変。

心臓カテーテル治療のまとめ

  • 心臓カテーテル治療に関して、PCIの目的や手順、合併症、略語などを詳しく解説しました。
  • 難しい用語が多くて、内容を理解するのに時間がかかるかもしれませんが、患者さんにどのような治療が行われたのかをしっかりと知ることが重要だと思います。
  • この記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

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・村松裕介:[ひと目でわかる! 一気見ずかん] 経皮的冠動脈インターベンション ; PCIハートナーシング 37(2): 131-140, 2024.
・臼井公人:カテーテル治療.ハートナーシング 36(8): 751-761, 2023.
・日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン:安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)
・日本循環器学会:2022年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療

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