私は急性期病院で理学療法士をしています。
職業柄、病院の患者さんや街中で歩いている方の「歩き方」や「杖の長さ」にいつも目が行きます。そして思うことがあります。
あの人、杖の高さが身長に合ってないなぁ。
高さを合わせれば、もっと安全に歩けるのになぁ。
せっかく杖を持っていても、高さが合っていなければ宝の持ち腐れです。
ましてや、高すぎることによりつまづいて転倒すると危険さえあります。
私がリハビリで関わった方の杖の高さは、必ずご本人に合わせるのですが、高さ調整の仕方自体を知らない方が多いことに気づきました。
そこで、今回は杖の高さの合わせ方のキホンについてお伝えします。
杖の適切な高さについて
まず、杖の適切な高さの決め方のには以下の2つがあります。
1.図の赤い矢印のところが、手首の骨の出っ張りの部分です。ここに杖の持ち手の高さを合わせると、ちょうどいい高さになります。
2.図の矢印部分のように、肘を30~40度曲げた状態で、杖がちょうど床につく位置が良い高さです。
1、2の方法どちらでも高さを合わせられますが、腰を曲げた状態(円背姿勢)で歩かれる方は「2の方法」がお勧めです。
無理に腰を伸ばさずに、実際に歩く姿勢で調節を行って下さい。
杖の高さ調整の方法
それでは、実際の高さ調整の方法です。今回は最も一般的な、金属製の調節可能な杖(図参照)を例に紹介します。
- まず、赤の部分を時計周りに回して緩めます。これで調整できるようになります。
- 黄色の部分のボタンが出ているところを押しこみながら、杖の先端を上下に動かし長さを調節します。
- 丁度いい高さの穴に合わせて「カチッ」と音がしてボタンが出るのを確認します。
- 赤い部分を反時計回りに回して締めます。これで先ほどのようにボタンを押しても動かなくなります。
※4のロックをしないと、歩いているときにカチカチ音がしたり、ついた拍子に高さが変わったりして危険ですので、必ず行いましょう。
(参考:杖をつく位置やタイミングを知りたい方へ「杖歩行の方法について」)
杖先ゴムと便利な付属品について
杖を使用する際に気を付けていただきたいことが、杖先のゴムです。
杖の先のゴムは使用していくと摩耗していきます。
経年劣化でゴムが固くなり、自然にひび割れてくることもあります。
通常、図のようにゴムの裏面(地面につくところ)には、溝がありますが、摩耗してくるとこの溝がなくなります。
この状態では、歩行時に杖先が滑りやすくなり危険です。
杖先ゴムは引っ張ると取り外せます。杖を買い替えることなく、杖先ゴムのみを交換することができますので、安全に歩行するために定期的に確認しましょう。替えの杖先ゴムを購入する時は、杖の太さに注意して、お持ちの杖に合ったものをご購入ください。
杖を購入した店舗やインターネットで購入することができます。
もう1点、杖を使うときに意外と困るのが、使用後の置き場所、置き方です。
壁に立てかけると滑って倒れてしまうことが多く、持ち手の部分をどこかに引っかけても下に落ちてしまうことがあります。
これの何が問題かと言うと、杖を使用されている方が、この杖を拾おうとした時です。
物を拾う動作は体勢を低くして不安定な状態になりやすく、転倒のリスクがあります。
この問題を解決するのに便利だなと思った商品が2つあります。リハビリ中実際の患者さんが使用されていて、何度もいいなと思いました。
まずは、幅に広い杖先ゴムです。ゴムの交換だけで、お持ちの杖が自立する杖になります。
ベッドの横など、近い場所に杖を立てておけるので、使いたいときにすぐに使えます。
もう1つは杖ホルダーです。ホルダー部分が滑らなくなっていて、引っかけても安定します。
ちょっとしたことですが、これ一つで日々の杖を拾うストレスから解放されると思うとコスパはいいなと思います。
ちなみに、使わないときは杖に一体化する形で収納できます。
まとめ
- 杖の適切な高さ、高さ調整の方法について説明しました。
- 正しい知識と少しの工夫で、杖は歩行補助具として大きな役割を果たします。
- 杖使用の際の豆知識、便利グッズを紹介しました。ご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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