こんにちは、心臓リハビリテーション指導士のぴんころです。
今回は「血圧」について一緒に学びましょう!
「高血圧」は、日本人の約4000万人が罹患しているといわれる国民病です。
高血圧を放置すると、脳卒中や心疾患、慢性腎臓病などにかかるリスクや、死亡のリスクが高くなることが知られています。
この記事では、以下のことを中心にお伝えします。これを読んで血圧について詳しくなりましょう!
・血圧の定義(正常値、高血圧、降圧目標)
・高血圧にともなうリスク
・血圧を下げるための治療、自分で出来ること
・血圧の正しい測り方
血圧の基準値について
血圧の正常値と高血圧
まず血圧の正常値は、収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80㎜Hg未満です。収縮期・拡張期血圧のどちらも基準値を満たしている必要があります。
【正常血圧】診察室血圧 120/80 mmHg未満(家庭血圧 115/75 mmHg未満)
収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90㎜Hg以上、もしくはその両方である場合が「高血圧」に該当します。
基本的には、血圧は高くなればなるほど、様々な疾患を引き起こすリスクが高くなります。
【高血圧の定義】診察室血圧 140/90 mmHg以上(家庭血圧 135/85 mmHg未満)
どちらか片方だけが上回っている場合でも「高血圧」と診断されます
診察室血圧と家庭血圧
血圧は測定する環境により2種類に分けられます。
「診察室血圧」とは、文字通り病院の診察室や検診などで測定する血圧を指しています。
一方「家庭血圧」は自宅で測定する血圧のことです。どの基準値も家庭血圧の方が5mmHgずつ低くなっている理由は、自宅ではリラックスして測定できることで診察室血圧よりも低い値になるためです。
ちなみに、病院などで血圧測定をする時に緊張しやすく「診察室血圧」が「家庭血圧」よりも大幅に高くなってしまう方がおられます。これを「白衣高血圧」といいます。白衣高血圧は、高血圧患者さんの15‐30%にみられます。
普段の血圧を測定しておくことで、「治療が必要な高血圧」なのか、「白衣高血圧」なのかを見分けることができるため、ご自身の「家庭血圧」を把握しておくことは重要といえます!
降圧目標
次に、高血圧の方が目標とする血圧「降圧目標」についてです。
2019年の高血圧ガイドラインでは、以下のように示されています。
【75歳未満の成人】診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧 125/75 mmHg未満)
【75歳以上の高齢者】 診察室血圧140/90mmHg未満(家庭血圧 135/85 mmHg未満)
年齢別にみると、高齢者の降圧目標の方が緩やかに設定されています。
病院で高血圧と診断された場合、この値を目標に降圧治療が開始されます。
なぜ「高血圧」はいけないのか?
高血圧の定義と、降圧目標についてお伝えしましたが、そもそも「高血圧」ではなぜダメなのでしょうか?
高血圧で起こるリスク
これまでの研究で、高血圧には以下のような様々なリスクがあることが分かっています。
- 高血圧は「脳卒中」「心疾患」「慢性腎臓病」などの疾患に罹患するリスクを上昇させる
- 高血圧は各種疾患への罹患を通して、「全死亡リスク」を上昇させる
- 中年期の高血圧は、高年齢期の「血管性認知症発症」や「日常生活活動(ADL)低下」リスクを上昇させる
「高血圧」自体にはあまり症状がないので、治療せずに放置している方がおられますが、これは長い目でみると非常に危険なことです。
診察室血圧に基づいた脳心血管病のリスク
以下に示す表は、脳卒中や心疾患となる可能性(リスク)がどの程度かを表したものです。
血圧が180/110mmHg以上のⅢ度高血圧の場合は、その他の要因がない場合でも「高リスク」となります。
高血圧の程度が低い方でも、表の縦軸の「リスク第二層」「リスク第三層」の要因が加わることで、脳心血管病のリスクは高くなることに注意が必要です。
年齢に関しては変えることの出来ない因子ですが、そのほかの因子については生活習慣の改善や適切な治療で是正することが可能なため、リスクを少しでも下げられるように、取り組むことが大切です。「血圧の管理はその第一歩」といえます。
【上の血圧】と【下の血圧】が表すことは?
- 「上」の血圧=収縮期血圧(最高血圧)
- 「下」の血圧=拡張期血圧(最低血圧)
上の血圧つまり「収縮期血圧」とは、心臓が収縮したときの血圧で、下の血圧「拡張期血圧」は心臓が拡張した(広がった)ときの血圧です。
心臓が収縮することで全身に血液を送り出すため、「収縮期血圧」の方が拡張期血圧に比べて高くなります。
また、血圧指標の中で将来の脳心血管病リスクと最も関連が強いのは「収縮期血圧」ということが明らかになっています。
血圧を下げる薬
高血圧を治療することの重要性をお示ししましたが、血圧を下げる薬には様々なものがあります。
まずは1種類を少量から開始し、十分な効果が得られない場合は、種類の異なる降圧薬を少量ずつ併用する場合が多いようです。主要な薬は以下の通りです。
Ca(カルシウム)拮抗薬
血管を収縮させる原因となる物質(カルシウムイオン)が血管に入るのを抑えることで血圧を低下させる作用があります。
例)ニフェジピン(アダラート®)、アムロジピン(アムロジン®、ノルバスク®)、ジルチアゼム(ヘルベッサー®)
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
血圧を上昇させる物質(アンジオテンシンⅡ)の作用を抑え、血圧を低下させる作用があります。
例)テルミサルタン(ミカルディス®)、オルミサルタン(オルメテック®)、アジルサルタン(アジルバ®)
ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
血圧を上昇させる物質(アンジオテンシンⅡ)の産生を抑え、血圧を低下させる作用があります。
例)エナラプリル(レニベース®)、カプトプリル(カプトリル®)
利尿薬
尿を排出を促す薬で、体内の水分量(体液)を減らすことで血圧を低下させる作用があります。
例)ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド(フルイトラン®)
β遮断薬
心臓に作用して交感神経活性を抑えることで心拍数を下げ、血圧を低下させる作用があります。
例)アテノロール(テノーミン®)、カルテオロール塩酸塩(ミラケン®)
血圧を下げるために出来ること
薬の治療以外にも血圧を下げるために出来ることがあります。
食生活
血圧を下げるための食生活のポイントとしてまず挙げられるのは「減塩」です。減塩目標は「食塩6g/日未満」です。
その他、野菜や果物を積極的に摂取し、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控えることが推奨されています。
生活習慣の改善
生活習慣で改善すべきポイントは「喫煙」と「飲酒」です。
喫煙は高血圧以外にも体に様々な害をもたらすため、「禁煙」することが推奨されています。
飲酒に関しては、純アルコール(エタノール)で男性20-30mL、女性はその約半分の10-20mLに「節酒」することが勧められます。
運動
有酸素運動による降圧効果は多くの研究で報告されています。
また、適正体重(BMI 25未満)の維持や、生活習慣病予防にも有酸素運動は有効です。
運動強度や量に関しては、軽強度の有酸素運動(動的および静的筋肉負荷運動)を毎日30分、あるいは週180分以上行うことが推奨されています。
具体的にはウォーキングやラジオ体操など、簡単なものでも継続することで十分な効果が得られます。
血圧の正しい測り方
- 血圧計の種類:上腕に巻くタイプを使用
- 測定する時間:朝夕の2回(できれば朝は起床後1時間以内、夕は就寝前)
- 測定する環境:測定前に1~2分の安静をとる、毎日なるべく同じ時間・環境で測定する
- 測定方法:血圧計のカフが心臓と同じ高さになるように設定する
- 測定回数:原則2回測定し、その平均をとる
家庭血圧をこのように毎日測定し、血圧手帳などに記載します。最近ではスマホで管理されている方も多いです。
毎日の血圧を記録することで、高血圧の治療効果の判定や血圧の変化の推移を確認することができます。
何より大切なことは、自分自身の血圧を毎日把握することで、自分の体調を知ろうとすること(自己管理)だと思います。
正しく測定された血圧は、より有用性の高い情報になります!
血圧についてのまとめ
- 血圧の正常値や高血圧、降圧のための治療・取り組みなどについてお伝えしました。
- 高血圧はとても身近な病気で、誰にでもなる可能性があります。
- 脳卒中や心疾患をはじめとする多くの疾患を予防するためにも高血圧に対する適切な治療は重要です。
- まずは自分の健康状態を知ることから始め、健康な毎日を継続していきましょう!
- 最後までお読みいただきありがとうございました。
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