アミロイドーシスとは
アミロイドーシスとは、「アミロイド」と呼ばれる異常凝集したタンパク質が、全身の臓器に沈着し障害を引き起こす疾患です。
アミロイドは当初、多糖であると考えられており、ギリシャ語の「デンプン」を意味する「amylon」と、「~のようなもの」という意味の「‐oid」を合わせて「amyloid」と命名されました。
様々な病型があり個人差がありますが、基本的に進行性の経過をたどります。
アミロイドーシスの原因
アミロイドーシスは、原因となるやタンパク質が凝集してアミロイドとして臓器に沈着して発病することがわかっています。
生体に存在する様々なタンパク質が「アミロイド」になることが知られており、その種類は30種類以上あると報告されています。
アミロイドが生じる過程は、原因タンパク質の種類によって異なると考えられており、その細かな機序については現時点では不明です。
アミロイドーシスの種類
アミロイドーシスは、全身の諸臓器にアミロイドが沈着する「全身性アミロイドーシス」と、特定臓器に限局して沈着する「局所性アミロイドーシス」に大別されます。
全身性アミロイドーシス
全身性アミロイドーシスは、遺伝性と非遺伝性に分けられます。
ATTRvアミロイドーシスが遺伝性で、その他は非遺伝性です。
※指定難病のアミロイドーシス
厚生労働省では下記の4つの全身性アミロイドーシスを指定難病として定めています。
1.AL/AH アミロイドーシス(多発性骨髄腫に続発するものは除く)
2.ATTRwt アミロイドーシス(腱・靭帯のみに限局する病態は除く)
3.ATTRv アミロイドーシス
4.ATTRv 以外の遺伝性全身性アミロイドーシス
全身性アミロイドーシスが対象であり、二次性の病態によるアミロイドーシスや限局性アミロイドーシスは対象外となっています。
限局性アミロイドーシス
アミロイドが脳に限局的に沈着した場合、アルツハイマ―病の原因となります。
また、その他に限局性のアミロイド沈着は起こりやすい部位としては、気道・肺組織・膀胱・尿管・皮膚・乳房・眼などが挙げられます。
症状
アミロイドーシスは全身に起こる疾患のため、臨床症状は多種多様であることが特徴です。
アミロイドーシスの症状は、アミロイドの沈着による臓器・組織の障害に基づくもので、病型ごとに異なる臨床症状を示します。
それでは、臓器ごとの症状の特徴を確認していきましょう!
腎臓
糸球体・尿細管・間質にアミロイドが沈着し、腎機能障害をきたします。
症状:蛋白尿や浮腫、体重増加など
消化管
食道や腸管の蠕動異常を引き起こし、以下のような症状を呈します。
症状:下血、嘔気、食欲不振、腸閉塞、吸収不良症候群
肝臓
無痛性の肝腫大を生じることがあります。
心臓
左室拡張機能障害により拘束性心筋症の病態を引き起こし、心不全症状をきたします。
症状:心不全症状(息切れ、浮腫)、不整脈(めまいや失神)など
肺
巣状肺結節、気管気管支病変、またはびまん性肺胞沈着が起こります。
末梢神経
小径線維優位のポリニューロパチー症状を生じます。
症状:四肢末梢の温痛覚を主体とした感覚障害
自律神経
症状:起立性低血圧、下痢、便秘、排尿障害など
手根管・脊柱管・骨関節
生理的絞扼部である手根管・脊柱管では、組織におけるアミロイド沈着が起こりやすいといわれています。
症状:手根管症候群症状(手のしびれ、疼痛)、脊柱管狭窄症症状(間欠性跛行、下肢のしびれや痛み)、関節腫大
舌
症状:巨舌(舌が異常に大きくなり、口の中に収まらないような状態のもの)
皮膚
症状:強皮症様肥厚や結節、紫斑
病型による症状の特徴の違い
AL/AHアミロイドーシス
心臓、腎臓、肝臓、脾臓、皮膚、神経、血管、腸、舌などにアミロイドが沈着するのが特徴です。
多発性骨髄腫の患者さんで、約10~15%の方にAL/AHアミロイドーシスの合併がみられるという報告あります。
巨舌やネフローゼ症候群を有する左室肥大の心不全症例では、AL/AHアミロイドーシスによる心アミロイドーシスが疑われます。
ATTRwt(野生型)アミロイドーシス
肝臓で産生されるアミロイド一種であるトランスサイレチンが、心臓や神経などに沈着する非遺伝性の疾患で、男性に多くみられます。
手根管症候群を有する心不全患者さんの場合は、ATTRwtが疑われます。
ATTRv(遺伝性)アミロイドーシス
遺伝的に変異を起こしたトランスサイレチンが、腎臓、心臓、消化管、眼、神経などに沈着するまれな遺伝性の疾患です。
AAアミロイドーシス
血清アミロイドA蛋白が原因タンパク質となり、関節リウマチ・血管炎症候群・自己免疫疾患などの慢性炎症性疾患によって、二次的に起こるアミロイドーシスです。
腎臓にアミロイドが沈着し、腎機能障害を引き起こす頻度が高い疾患です。
アミロイドーシスの検査
アミロイドーシスが疑われた場合、以下のような検査が行われる場合が多いです。
- 採血検査
- 尿検査
- 胸部レントゲン検査
- 心電図
- 心エコー検査
- 心臓MRI、心筋シンチグラフィー
- 生検:体の組織を少量採取する検査
アミロイドーシスの治療
アミロイドーシスの治療は病型によって異なります。
AL/AHアミロイドーシス
自家造血幹細胞移植、化学療法(メルファラン+デキサメタゾン)、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブなど)
ATTRwt(野生型)アミロイドーシス
TRR安定化薬(タファミジス)、対症療法
ATTRv(遺伝性)アミロイドーシス
肝移植、TRR安定化薬(タファミジスなど)、低分子干渉RNA製剤(パティシランなど)
AA(続発性)アミロイドーシス
基礎疾患(感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍など)の治療が中心
透析関連アミロイドーシス
生体適合性の高い透析膜の使用、対症療法
その他に、対症療法として、心不全に対して利尿剤が投与されたり、
洞不全や房室ブロックなどの徐脈性不整脈に対して「ペースメーカー」治療が行われたりします!
アミロイドーシスについてのまとめ
- 厚生労働省の指定難病の一つに挙げられている「アミロイドーシス」についてまとめました。
- アミロイドーシスには様々な病型があり、症状が出る部位にもそれぞれの特徴があります。
- アミロイドーシスは、心不全などの「生命予後」に直結する症状や、アルツハイマー病などの「生活の質」に大きく関わる症状を引き起こす可能性がある疾患であり、この疾患についての知識を持っておくことは重要だと感じました。
- この記事の内容が一つでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
(参考) ・アミロイドーシスに関する調査研究班:全身性アミロイドーシス 指定難病の対象となる疾患分類 ・アミロイドーシス:日本医事新報 (5069), 41-42, 2021. ・アミロイドーシスの病理診断:診断病理 38(3), 226-239, 2021. ・アミロイドーシスの概念・分類:Heart View 24(11), 1048-1053, 2020.
コメント