【人生会議】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?

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ぴんころ
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こんにちは、理学療法士のぴんころです。

あなたは、今日のテーマ【アドバンス・ケア・プランニング】という言葉を聞いたことがありますか?

この記事では、アドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)について以下の内容を説明しています。

  • ACPの言葉の意味
  • ACPの目的
  • ACPの方法
  • ACPを行うことのメリット、デメリット
  • ACPを行う際の注意点
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ACPとは

ACPの定義

まずはACPは、以下のように定義されています。

今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス

ACPの目標は、患者さんが重篤な状態になったときに、患者さん本人の価値観や目標、思いなどを実際に受ける医療に反映させることです。

年齢や病気の状態にかかわらず、患者さんの価値、人生の目標、将来の医療に関する望みを理解し共有し合うプロセスのことをACPといいます。

ぴんころ
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自分が望む治療を受けるため、または意思決定が出来ない状態になったもしもの時のために、自分の思いを事前に伝えておく過程をACPというんですね。

ACPの認知度

日本でのACPの認知度はまだまだ低いのが現状です。

平成29年度の厚生労働省の調査によると、一般国民のACPについて全く知らない人が75.5%という結果でした(下図参照)。

一方で、ACPのような話し合いを行うことへの賛否についての質問では、一般国民の64.9%が「賛成」と回答し、ACPを行うことそのものに関しては賛成が多い結果となっています。

ACPの啓発

上記のようにACPの認知度の低いことを受けて、厚生労働省では啓発活動が行われています。

ACPをより身近なものに感じてもらうため、平成30年に愛称として「人生会議」と名付けられました。

「人生会議(ACP)」のロゴマーク

また、11月30日(いい看取り・看取られ)を「人生会議の日」とし、人生の最終段階における医療・ケアについて考える日とし、啓発活動が続けられています。

ACPはなぜ必要なのか

では、なぜACPが必要なのかについて説明します。

人生の最終段階において、多くの方は自分自身での意思決定が難しい状態になり、その割合は約70%といわれています。

病状の悪化や不慮の事故、認知症など理由は様々だと思いますが、自分で意思決定が出来なくなった場合、その後の治療に関しては家族や本人に最も近い人に委ねられることになります。

これは多くの場合、正解のない非常に難しい選択で、本人の意思を尊重したくても出来ないというケースが多いのが現状です。そこで必要となるのがACPです。

【ACPを行うことで可能になること】

患者さん本人→最期まで自分の望んだ治療を受けることが出来る

家族→大切な人の意思を尊重した決断が出来る、決定した内容に対して後悔しにくい

ぴんころ
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ACPをすることで、自分の希望がかなうことはもちろんですが、家族の負担を減らすことにもつながるのですね。

ACPの進め方

それではここからは、実際のACPの進め方について説明していきます。

STEP1 自分が大切にしたいことを考える

まずは、自分らしく暮らしていくために、自分が何を大切にしたいかを考えることから始めます。

【例】
  • 趣味が生きがいだから、できるだけ長く続けたい
  • 最期の時は病院ではなく、自分の家で家族と過ごしたい
  • なるべく家族に迷惑をかけたくない
  • どんな治療でもして、一日でも長生きしたい など

これまで生きてきて「自分が大切にしてきたこと」「これだけは譲れないこと」などを考えてみます。改めて自分の思いと向き合うことで、自分が望んでいることが何かを確認します。

STEP2 もしものとき、自分の代わりに意思決定してくれる人を選ぶ

自分の思いを確認出来たら、その思いを伝えて共有する人が必要です。

自分の思いを話すことができて意見を尊重してくれる人普段から頼りにしている人を選びます。

もしものときは、その人に意思決定を依頼します。

STEP3 自分の健康や病気について学ぶ

病気を発症してからACPを行う場合は、現在の病状これからの治療今後予想される経過(予後)などについて確認します。

自分が今どのような状態にあるのか、これから先どのような未来が予想されるのかを知ることで、次のステップで行われる話合いが、より具体的なものになります。

STEP4 希望する医療やケアについて話し合い、伝える

自分の現在の希望体の状態などが整理できたら、家族や代理人、医療従事者と話し合いをします

話し合いの内容【例】
  • 出来る限りの治療を受けていきたい
  • 治療の時はなるべく苦痛のない方法を選択したい
  • 良くなる見込みが少ない場合は、人工呼吸器は使用しないでほしい
  • もしも意思表示できなくなったら、〇〇さんに任せる など

話しあうことでお互いの理解が深まり、自分の希望について共通の認識をもつことができます。

これらは簡単に決められるものではなく、考えも日々変化する可能性があるため、一度に全部決める必要のではなく、少しづつ時間をかけて話し合うことも大切です。

STEP5 自分の思いや希望を書き留めておく

話し合った内容や自分の希望について、記録に残しておくことが大切です。

具体的には「エンディングノート」や「ACPシート(下図参照)」などを利用すると始めやすいと思います。

文書に残しておくことで、もしも自分が意思決定ができなくなった時に、周囲の人が判断するのに役立ちます。

参考:大阪府の「人生会議の記録」記入シート

ACPのメリットとデメリット

メリット

ACPを行うメリットとして、まず患者さん自身の自己コントロール感や満足度が高まる点が挙げられます。

また、患者本人の気持ちが満たされることで家族の満足度も向上し、ご本人が亡くなった後も家族の不安や抑うつが減少するとされています。

ACPの実施は代理意思決定者と医師のコミュニケーションを改善するメリットもあり、医療・ケアチームはACPを行うことでさらにやご家族に寄り添ったサポートを行うことが可能になります。

デメリット

ACPを実施するには定期的に話し合いの場を設ける必要があるため、時間と手間がかかる点がデメリットとして挙げられます。

また、自分の最期について向き合う機会が増えることで、ACPが自分や家族にとってつらい体験になる可能性もあり、すべての方への適用は難しいという点があります。

ACPの注意点

ACPを行う時期

ACPを始める時期に決まりはありません。あまり難しく考えすぎず、まずはACPを知り家族との簡単な会話から始めるといいと思います。

私の両親は常々こんなことを言っています。

母

私には延命治療はしないでほしい。苦しくて痛いのは絶対いやだから。

父

私は出来る治療は全てしてほしい。つらくても、長生きしたいな。

両親の間でもそれぞれ考えは全く違い、こんな話をしなければ私たちは両親の考えを知ることはなかったと思います。

ただし、ACPの実施が早すぎてしまうと話し合いの内容が不明確・不明瞭になってしまいます。

そのため、病状が悪化したとき大きな身体機能の低下があったとき、治療内容を変更したときなど複数回に分けて、適切な時期に適切な話題でACPを行うことが大切になります。

ACPは何度も繰り返し行う

人の気持ちは、その時々で変化するものです。患者さん本人はもちろんですが、ご家族の気持ちも同様に変化します。

そのため、ACPは一度で決まるものではなく、下記のサイクルのように繰り返し行うことが重要です。

ACPのサイクル

①自分の希望を考える

②信頼できる人に話す

③思いを共有して書き留める

→考えは変わるので①~③を繰り返す

ACPは今後の過ごし方を前向きにとらえるもの

人生の最期について決定すると聞くと、「縁起でもない」「そんなこと考えたくない」と思われる方がいるかもしれません。

実際、厚生省の「人生の最終段階における医療について家族等や医療介護関係者との話し合いについて」の調査では、一般国民の55.1%が「話し合ったことがない」と回答しています。

しかし、ACPは将来の過ごし方を決めていくプロセスであり、その中に今後の治療やケアについての決定が含まれています。

決して悲観的なものではなく、自分の意思を表示できる前向きな取り組みとして捉えることが大切だと思います。

ACPについてのまとめ

  • アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について解説しました。
  • 患者さん本人が主体となり、自分の希望に沿った医療・介護が受けられることは理想的です。
  • ACPの考え方が浸透し、普段から自分の人生について考え、周囲の人と考えを共有することが出来る環境づくりが大切だと思いました。
  • この記事が一人でも多くの方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献:
厚生労働省「アドバンス・ケア・プランニング いのちの終わりについて話し合いを始める」
厚生労働省「人生会議」してみませんか
厚生労働省 平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書
東京都医師会 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)―人生会議―
大阪府 アドバンス・ケア・プランニング(ACP、愛称『人生会議』)をご存じですか?

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